見えて来た全体像。本格的な世代交代はアジアカップ後 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 相手の2トップがプレッシャーを掛けて来ない状況だったから、長谷部がより高い位置を取ってもよかった。長谷部と遠藤が入れ替わったり、遠藤と長谷部が並んで2ボランチにしたりして、ビルドアップをさらにスムーズにさせることもできた。

 そのあたりの柔軟性は、長谷部も感じているようで、課題として挙げている。

「もう少し自分で持ち運んだりとか、もう一個前の中盤のところでボールを受けたりとか、出してからもう少し前へ行くとか、バリエーションを増やしていきたいと思う」

 自分たちで考え、自由に、臨機応変にゲームを進めていくことは、「言われたことに従順」な日本人にとって苦手とされてきたこと。だが、日本サッカーがもうひとつ上のステージに上がるためには不可欠で、まずはアジアカップで、ブラジルW杯の経験者を中心にアギーレ監督の求める戦い方にチャレンジしていくことになる。

 9月、10月の4試合で気になる若手を手もとに呼んでふるいにかけ、そこに計算の立つブラジルW杯の主力を加えて、チームを編成する——。

 初陣から4ヶ月でアジアカップを迎えるという状況で、将来の世代交代を睨みながら、アジアカップも獲ることを考えれば、これまでのチーム作りは、理に適(かな)ったものだ。

 所属クラブでレギュラーではなかった皆川佑介(広島FW)や坂井達弥(鳥栖DF)をいきなり抜擢し、貴重な中立国(シンガポール)でのブラジル戦で若手を大量に送り込んだために判断が難しくなったが、大きな流れで見ていくと、現実的だと言っていい。

 本格的な世代交代は、アジアカップが終わってから——。おそらくアギーレ監督は、そう考えているに違いない。アジアカップを戦うチームの全体像が見えてきた。

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