代表復帰の豊田陽平。「平常心でプレイする」の真意

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images Sport

 一流アスリートは自分の信念に頑固なところはあるが、周りの人に対しては鷹揚で心が広い。選手としてある領域まで上り詰めると、武士道で言う「惻隠の情」を身につけるのだろう。慈悲深く、人を思いやれる。そうした仁の心は、泰然自若とした生き方につながる――。

 11月のインターナショナルマッチで日本代表に復帰した豊田陽平は、不動の心で戦いに挑む。

アギーレジャパンに初招集された豊田陽平(サガン鳥栖)アギーレジャパンに初招集された豊田陽平(サガン鳥栖)「客観的に冷静に自分を見つめるようにしています。できることを弁(わきま)えているつもりなので。つまらないかもしれませんが、『いつもと変わりなくやるだけ』というのは本心で。感情を高ぶらせていいプレイができることもあるでしょうけど、自分は平常心でプレイします」

 彼は周りに流されない。例えばブラジルW杯メンバーに選ばれなかったことにも、新生アギーレ代表に選ばれていなかったことにも、わずかな不満も口にしていない。むしろブラジルW杯ではテレビの解説を引き受け、アギーレに選ばれた同僚の若手選手を快く送り出した。その視線は、"自分がいかに行動しているか"に向けられる。

「僕の場合は、周りに生かされることで、ゴールという結果を出せるようになりました。でも、まだまだ決められる場面があると思いますし。もっと得点パターンを増やし、精度を上げる必要がありますね」

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