ブラジル戦惨敗の教訓。「繋ぐ」より「奪う」プレイを (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 世界のトップクラス、ベスト16の常連国を向こうに回した場合は、それが致命傷に繋がる。彼らはその瞬間を手ぐすね引いて待ち構えている。そこでミスを犯さないのが良いチームであり、良い選手。その罠にまんまと引っ掛かってしまった柴崎は、ワールドクラスとは言えない。

 むしろこれは、日本が狙うべきプレイだ。良いタイミング、良い場所でボールを奪う。アギーレは就任直後の記者会見で「まず守りを」と述べた。日本のメディアの中には、方向性が違うのではないかと指摘する声もあったが、ボールを奪わなければ、攻撃は始まらないのだ。良いボールの奪い方をしなければ、良い攻撃は始まらないのだ。

 この日のブラジルは、そのお手本だったと言える。ブラジルは試合開始直後から、ボールを繋いだ。ボールを支配した。しかし、それだけでは日本を圧倒することができなかった。

 ブラジルよりボール操作術が低い日本が考えなければならない点だ。いかに繋ぐかも大切だが、それと同じぐらい、いやそれ以上に、いかに奪うかは重要なテーマになる。

 柴崎は、言ってみれば繋ぐ派の代表選手だ。国内ではそれで十分やれているが、出るところに出れば、それだけでは足りない選手になる。逆に相手の餌食になる。日本は強者ではないのだ。強者のブラジルでさえ、奪うことに全精力を傾けてくる。奪った勢いを大切にしようとする。弱者の日本は、もっとそこに拘(こだわ)る必要がある。

 弱者なのに暢気(のんき)。弱者なのに軽い。チームの中にピリピリとしたムードが漂っていない。ザックジャパンは特にその傾向が強かったが、アギーレジャパンにもそのイメージは依然として残る。日本の癖になりつつある。この日の柴崎のようなプレイがゼロにならない限り、ベスト16以上は望めない。

 奪う。奪われる。この点にもっとシビアにならなければ、日本はワンランク上のチームにならない。僕はそう思うのだ。

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