ブラジル戦惨敗の教訓。「繋ぐ」より「奪う」プレイを (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 しかし、その流れは後半開始早々に一変した。その3分に2点目を許すと、それまでの均衡状態は瓦解した。「少なくとも以降15分間、悪い形が続くことになった」とはアギーレの言葉になる。

 この失点を招く原因を作った選手は、アギーレがジャマイカ戦後の会見で「ワールドクラス!」と称賛した柴崎岳だった。彼の軽いプレイが発端になっていたのは何とも言えぬ皮肉だった。そのふわっとしたプレイで、攻守はたちまち入れ代わり、ブラジルは日本陣内に、堤防が決壊したかのような勢いでなだれ込んできた。

 後半14分にも、柴崎はその手のミスを犯し、決定的なピンチを招いている。

 柴崎のボールさばきは、確かに悪くない。ワールドクラスは言い過ぎとしても、世界的に見てまずまずのレベルにある。しかし中盤選手の善し悪しは、ボールさばきだけで決まるわけではない。悪い奪われ方をしない選手。悪いタイミング、悪い場所でボールを失わない選手。あってはならないミスを犯さない選手こそが、良い中盤選手の条件になる。

 後半3分、柴崎が奪われた場所は真ん中だった。センターサークル付近で、日本とブラジルの攻守は入れ代わった。奪われる位置が、真ん中ではなくサイドなら話は少し違っていた。ゴールまでの直線距離は、真ん中よりサイドの方が長い。ワンプレイ、ツープレイ分、時間を稼ぐことができる。「奪われるなら外」といわれる理由だ。サイドにボールを運ぶメリット、サイド攻撃の有効性を示すものにもなる。

 真ん中で奪われる本当の意味での怖さを、柴崎が知らなかったとしても不思議はない。Jリーグでは同じようなミスを犯しても、失点に繋がることはまずないからだ。

 森岡亮太も前半、ここで奪われるとマズイなと思わせる場面でボールを失い、それが日本にピンチをもたらしている。田口泰士も後半、サイドに振ったミドルパスをカットされ、そこから逆襲を招いたことがあった。

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