日本辛勝。得点力不足はアタッカーのせいではない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 この日、起用法が最も注目された香川真司は、結局、Vの字を描く中盤の左前方に収まることになった。評価を言えば、5と5.5の間ぐらいになる。局面では見せ場も作ったが、ポジションに相応しいプレイができたかと言えばノーだ。

 Vの字を描く中盤の左上部は、身体の向きを臨機応変に変える回転力が求められる。いわゆる中盤的な抑揚のある身のこなしが求められるが、香川は前を向いて初めて力を発揮するタイプだ。プレイは概して直線的。そして淡泊だ。視野も広い方ではない。

 その結果、後方で生まれた単調な流れは、彼を経由しても是正されることはなかった。むしろ単調さに拍車がかかったと言うべきだろう。Vの字を描く中盤左上部には、マッチしていないと僕は見る。少なくとも、彼のストライクゾーンのド真ん中にあるポジションとは言えないのだ。

 強い相手と戦った時、それはいっそう顕著になるのではないか。そう思っていたところ、ブラジル戦欠場のニュースが舞い込んできた。ポジションの適性が分らないまま次に進むことになった。すなわち、謎は深まることになった。

 アギーレジャパンの現在の姿は、必ずしも「中盤天国ニッポン」ではない。改良の余地が残された場所になる。長谷部、遠藤をコンビで長年、固定して起用してきたしわ寄せが、いまここに現れている恰好だ。

 候補者はそれなりにいる。選択肢はあらゆるポジションの中で最も多い。改良の余地は最も多く残されている。アギーレにはMFのベストな組み合わせをとことん追求して欲しいものである。

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