アギーレJの起爆剤となる「MF」香川真司 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan sports

 まずは前提として、香川がパスの受け手だけではなく、出し手にもなれるということが挙げられる。つまり、香川の能力を最大限に生かそうと思えば、3トップよりも1列下がったポジションに置くほうが有効だということである。

 今季ドルトムントに復帰してからのプレイを見ても、香川は自らがゴールを決めるだけでなく、巧みなラストパスでアシストするなど、攻撃のアイデアが豊富でチャンスメイクにも長(た)けている。もともとボールに数多く触れてリズムを作るタイプでもあり、中盤に置くことでチーム全体のパスの回りを円滑にする効果も期待できる。

 その一方で、やはりパスの受け手として非凡な才能を持つことも確かである。とりわけ狭いスペースにトップスピードで走り込み、フィニッシュにつなげる能力は卓越している。3トップが作り出したスペースに香川が飛び出し、ゴールを決める。アギーレ監督が頭に描くのも、そんなシーンのはずだ。

 新指揮官の下での練習を終え、「ポゼッションのときもそうですが、速くボールを回すことの意識であったり、縦に入れることの意識であったり、そういうことが要求される練習が多かった」と香川。そのなかで香川に期待されるのが、ゴールへの最後の仕上げということになるのだろう。

 9月の2試合を見ても攻撃時に中盤が押し上げられず、3トップとの距離が離れてしまうケースが目立った。その結果、攻撃に厚みが作れず、ゴールを奪う以前になかなかチャンスにさえ至らなかった。

 主にインサイドMFで起用された細貝萌、柴崎の本職はボランチで、田中はFW。相手ディフェンスの間でボールを受けながら3トップと連係していくというタイプの選手ではないだけに、香川の起用が新たな展開を生み出す可能性は十分にある。

 また、香川はザッケローニ前監督時代には主に4-2-3-1の左MFを任されながら、サイドでボールを待ち切れずに中央に入ってきたり、低い位置までボールを迎えにいったりと定位置を離れてしまうことが目立った。それを考えれば、香川のMF起用はチーム全体のバランスを保つためにも有効な策となりうる。

 香川自身、ポジションについては「監督が決めること。選手はそれに従うだけ」と素っ気ない様子を見せながらも、新たな挑戦を前にこう語っている。

「4-3-3もそんなにやったことがないし、(アギーレ監督が)どういう考えなのか、どういうスタイルなのかというのを、練習やミーティングで確認していけたらいいなと思う」

"MF香川真司"が、新生・日本代表に新たな魅力を加えられるかどうか。4カ月ぶりに帰ってきた背番号10に注目したい。

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