なでしこの敗因。埋まらなかったW杯組と若手の差 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 アジアで負けることが屈辱のように言われることもあるが、完璧な人選をし、戦術を固め、大会中の選手の成長を加えてはじめて手にすることができるのが"タイトル"だ。今大会において、それに値するのが北朝鮮だった。

 2連覇を逃した今、佐々木則夫監督が掲げた若手と中堅の融合は失敗に終わったと言わざるを得ない。初戦の中国戦以降、骨のあるチームとの対戦は決勝の北朝鮮戦のみ。この組み合わせをあえて不幸と言いたい。確かに2連覇という目標は明確でわかりやすい。しかし、本当に指揮官が期待したのは、トーナメントでの若手の成長。しかし残念ながら大きく化ける選手は出てこなかった。

「1対1の勝負には負けない」「クロスの精度には自信がある」「距離感さえ合えば上手く連係できる」――。それぞれ若手にはそれなりの自負があった。今、それらは決勝の戦いで打ち砕かれていることだろう。だからこそ、この悔しさを次に生かさなければならない。

 決勝でフル出場を果たしたFW増矢理花は、前線で北朝鮮の手ごわいCBコンビに張り合い、守備においても前線からプレスをかけ続けた。ボールを受けても囲まれて前を向けない場面がほとんどだったが、果敢にチャレンジし続けることもやめなかった。"このままでは通用しない"という実感は増矢の今後を大きく左右することになるかもしれない。

「パスに意図が感じられないって(阪口)ミズホさんに言われたとき、パス1本で次にどうしてほしいのか伝えなきゃいけないし、2個3個先の共通意識を持たないとダメなんだと思いました」(増矢)

 日本唯一のゴールを決めた宮間は、アシストをした川澄にボールが渡る前に、すでに川澄に声をかけて走り出していた。そこから宮間にボールが配給されたのは増矢の言う"2個先"のことであり、なでしこが再び世界を獲るために目指しているは"3個先"の動きだ。このイメージの共有が"なでしこ"の証とも言える。

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