宿敵・韓国とのベスト8決戦へ。鈴木武蔵にエースの自覚 (2ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi photo by AFLO

 U-22アジア選手権の行なわれた1月と言えば、Jリーガーにとってシーズンオフの真っ只中。鈴木武蔵に限らず、どの選手も身体が重そうで、本調子の選手を見つけるほうが難しいくらいだった。しかし、「あのときは期待に応えられなかった」と語った彼が、それから半年の間で急成長しているのは確かだ。オマーンから帰国したあとには、「シュートまでの持ち込み方や自分の動き方を、もう一度考え直して練習している」と言い、夏以降は、「監督(アルビレックス新潟の柳下正明監督)に言われて、練習後に居残りで、クロスからヘディングの練習をしているんです」と語る。

 アジア大会では、その成果が結果となって表れている。

 クウェートとの初戦で2ゴール、ネパールとの3戦目も2ゴール、そしてパレスチナとの決勝トーナメント1回戦でも1ゴールを決め、前回大会で得点王に輝いた永井謙佑(名古屋グランパス)の5ゴールに並ぶ得点をマークした。

 特筆すべきは、ゴールパターンの豊富さだ。クウェート戦の1点目とパレスチナ戦では、「苦手」というヘディングからのゴール。クウェート戦の2点目は、ニアサイドに飛び込むと見せかけ、途中で止まってマークを外し、マイナスのクロスを呼び込んだ。ネパール戦の2ゴールはいずれもファーに走ってボールを呼び込み、1点目は正確なトラップから右隅に流し込み、2点目はスライディングで蹴り込んだ。

 また、ゴールだけに留まらない。ネパール戦でのFW中島翔哉のゴールは、「翔哉が裏に走っていたのを感じた」と言う鈴木武蔵の絶妙なスルーから生まれ、パレスチナ戦の先制ゴールは、鈴木武蔵がポストプレイで落としたボールをMF遠藤航が決めたもの。ゴールに絡むプレイにも冴えが見える。

 プロになるまではスピードと身体能力で勝負してきたため、ヘディングやポストプレイは得意ではなかった。だが、そうした苦手なプレイで得点やアシストをマークしていることに、本人も手応えを隠さない。

「自分でも成長しているなって感じます。もっとたくさん獲って、それ(ヘディングやポストプレイ)がストロングポイントになってくれば、 FWとしてもう一段階成長できると思います。裏でも空中戦でも勝負できるようになれば、相手もやりにくいだろうと思いますから」

 我慢して起用し続けたストライカーの成長に、指揮官も目を細めている。

「ボックスに入っていく迫力は、オマーンの時(U-22アジア選手権)よりも増したなって感じるね」

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