蹴球解説!アギーレのサッカーが「攻撃的」である理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 プレッシングの対語になるのはカテナチオだ。後ろで守るサッカー。自軍ゴール前を固めるサッカーだ。攻撃的か、守備的かを見分けるポイントは、すなわちボールを奪う(奪われる)場所(高さ)になる。どこで奪おうとしているか。結果として、どこで奪っているか。

 攻撃的か否かは、守備というボールを奪う行為のあり方で決まる。攻撃的サッカーを満たす、それは大きな要素の一つになる。サッカーの特殊性を語る上でも踏まえておくべきポイントになる。奪われたら、すぐにボールを追う。この守備の動作は、攻撃的サッカーを象徴するアクションなのだ。

 ザックジャパンはそれができていただろうか。そのあたりにこだわったサッカーをしていただろうか。ブラジルW杯では、ボールを奪われた瞬間、天を仰ぎ、がっかりしている選手を見かけたが、これなどはまさに非攻撃的サッカーの象徴になる。

 攻撃的サッカーといえば、最近ではバルセロナを連想する。ボール支配率の高いパスサッカーを、だ。しかし、パスを繋ぐ技術がいくら高くても、ボールを奪う位置が低ければ(ボールを奪うスピードが遅ければ)、高い支配率は望めない。そのボールの奪還能力が、絶好調時のバルサはとりわけ高かった。マイボールと相手ボールとの間に境界がないサッカー。相手にボールを奪われても、ボールに対してマイボール時と同じように反応した。パスサッカーはあくまでも表面的なもの。ザックジャパンはその表面的なところだけを、真似していたきらいがある。

「ブラジルW杯では、守備を固めてカウンターを仕掛けるサッカーが台頭。世界のスタンダードになっている。攻撃重視のサッカーでは歯が立たなかった日本のあるべき道はこちらだ」という声をよく耳にする。

 手倉森誠監督率いるU−21チームを紹介する記事にも、そうした文言が目に付いた。「守備を固めて勝利を目指したい」と言うアギーレのサッカーとも良い関係を保つことができる。中にはそんな補足まで付いたものも見かける。話は相当こんがらがった状態にある。

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