【なでしこ】アジア大会2連覇に向けて、厳しい幕開け。

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 90分間、同じテンポで進んでしまった結果、中国に“日本慣れ”をさせた。だからこそ、中国はショートカウンター一本に絞り、日本の連係プレイに食いつかないことで体力を温存させることもできた。打開するには何らかの“変化”が必要だった。

「横には動かせるから、もう少しタテにも動かしたい。トップにちゃんと収まれば、違う形も見えたはずなので、前線の責任です」と髙瀬は声を落とす。「それでも裏は取り続けたいんです。もっと前を向いてプレイできるようにしないと相手も怖くない。今日は理花(増矢)との距離がなんか遠かったんです。もっと近くにいれば何かできる自信はある。90分の中で味を変えていかないとダメってことですね」(髙瀬)。

 その味付けのヒントは90分の中にあった。多くの難しいことをやって中途半端になるより、限られても軸となる攻撃の精度を上げることが先決だ。前半に見られた宮間のタテパスを生かしきる。阪口夢穂のバーを叩いたミドルシュートなど、DFを引き出しながら得点を狙うプレイを増やす。76分に生まれた左サイドをえぐった川澄がDF裏に入れたクロスボールのように速いラストパスを組み入れる。これだけでも十分に変化は起きるはずだ。

 ここからのグループリーグの戦いは格下が続く。中国と引き分けた今、1位通過には得失点差が絡む。2位以上で確実に決勝トーナメントに進めるとはいえ、中国以上に自陣に引きこもるであろう相手をどう“崩し切る”か。その中で、このチームらしいストロングポイントを見つけ、味を深めなければならない。攻守が激しく入れ替わる決勝トーナメント以降の戦いに備え、残り2試合で何とか突破口を見出してほしい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る