協会幹部が激白「W杯イヤーに強化試合ができなかったワケ」

  • 杉山茂樹●インタビュー interview by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――W杯が6月に迫っていたわけじゃないですか。代表にとって、最も大きいイベントだと思うのですが、それは理由にならないのですか。

 W杯は重要な大会です。だからといって、欧州各国がそうしたことをしますか? 例えばスペインとかイタリアとか、今年はW杯があるからシーズン前に代表を集めて合宿をやるからと言ったら、各クラブから猛反発を浴びますよ。

――欧州の国はやらないと思います。でも、日本は弱いわけですよね。W杯イヤーくらい、無理をしてもいいのではないでしょうか。

 確かに(日本は)強豪国のような力はありません。でも、選手はクラブから給料をもらっているわけです。昔のように、代表、代表って、クラブのことを考えずに、代表を中心にスケジュールは組めないです。今、指摘されていることは、単にカレンダーを見て「ここ、空いているじゃん」と言っている人と同じ発想ですよ。とにかく、1、2月に大会や何の予定もなしに代表を招集なんて、今の状況ではできないですね。

――ということは、W杯イヤーの本番までの5、6カ月というのは“鬼門”になりますね。

 そうですね。でも、どこの国も一緒ですから。

――試合が組めないことで、4年後が心配にならないですか。

 世界的にそうだから、仕方がないです。国内組を中心に集めて、アジアの各国と一緒に強化試合をやろうよっていうことはできるかもしれないけれども、それをやって勝てるほど、W杯は甘くないですから。

――試合数や合宿の少なさとは別に、強化試合の対戦相手も疑問でした。大会直前にやったコスタリカ(3-1/6月2日)、ザンビア(4-3/6月6日)はいいとしても、3月5日のニュージーランド、5月27日のキプロスというのは物足りなさがありました。もっと強い相手とテストマッチをやることはできなかったんですか。

 それぞれの試合とも、協会主導で対戦相手を決めたわけではなく、最終的には現場の意向を聞き、話し合って決めています。それで3月の試合については、1試合しかできないスケジュールでしたから、欧州の強豪国は日本には来てくれない。向こうに行けば、それなりのチームとやれたかもしれないけど、Jリーグも開幕してすぐで、それは現実的には実現できないことでした。そのうえで現場の話を聞くと、11月の欧州遠征以来で久しぶりのゲームでしたから、慣れているメンバーで、ある程度こちらが主導権を握れる相手とやりたい、ということだったので、ニュージーランドとマッチメイクしました。

 5月のキプロス戦に関しては、3月のときとは違って、強いチームを呼ぶこともできました。でも、ご存知のように、その直前に指宿合宿でかなり追い込んだトレーニングをする予定でいました。そこで最大の負荷をかけて、本番で最高の状態に持っていくための準備をするわけです。だから、合宿直後の試合では、選手たちのコンディションもよくない。何より選手がケガすることだけは避けたかった。その点を考慮してのマッチメイクです。

(つづく)

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