基礎練習からスタートしたアギーレ監督の真意を読み解く

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 日曜日にブンデスリーガの試合に出場し、この日からの練習参加となった酒井宏樹はアギーレ監督が求めるものについて「規律を大事にしている人だというのは話をしていても分かるし、まじめなスタッフが揃っている。自分たちもそういうところを心掛けたい」と語りながらも、「正直、今日の練習から(監督が求めるものを)くみ取るのは難しい」と苦笑いを浮かべた。

 また、本田圭佑はザッケローニ監督時代との練習の違いについて、「まだそれを言うのは早い」と語り、こう続けた。

「監督がやりたいことを今日やれたとは思わないし、(アギーレ監督がやりたいことが見えてくるのは)これからではないか」

 新監督が就任し、これほどゆったりとしたスタートを切る日本代表も珍しい。物足りなかったというのは、つまりそういうことだ。

 とはいえ、少々拍子抜けする一方で、そこにはある種の好感も覚えている。

 確かに自分の志向するサッカーを早く選手に植えつけることができれば、早期に内容と結果を手にすることが可能だろう。しかし、急いで戦術を浸透させようとすると、どうしても早くから選ばれている選手の戦術理解が進み、結果としてメンバーの固定化にもつながりかねない。

 次のワールドカップまでは4年ある。4年間を長期的に見たとき、チーム作りを焦る必要はまったくないし、むしろ広い視野で多くの選手を見極めていくほうが、チームとしてのポテンシャルを高めることにもつながる。

記者会見では「選手に協力的であることを求める」と語っていたアギーレ監督記者会見では「選手に協力的であることを求める」と語っていたアギーレ監督 また、ともすれば退屈な基本メニューばかりを課すことで、選手のパーソナリティを見極めているようにも見えた。実際、クロスからのシュート練習では、選手が自分の順番を待つ時間が長くなり、自然と気が抜けた様子を見せる選手もおり、それがプレイにも表れるケースがあった。

 アギーレ監督はメンバー発表の席上で、選手に求めることについて「仲間と協力的であること。しっかり責任を果たすこと」と語っている。あまりに基礎的なメニューの連続は、選手の「規律への意識」や「まじめさ」を見るには最適だったとも言える。

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