「自分たちのサッカー」に執着した日本が失ったモノ (2ページ目)

  • photo by Masuda Yuichi,Sueishi Naoyoshi

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杉山 ザッケローニ監督は"4年間の使い方"というのができていなかった。まあ、それは毎度のこと。日本代表を率いてきた過去の監督はみんな、それができていなかった。

中山 さっきは3カ月契約って、極端なことを言いましたけど、とにかく2年契約プラス2年オプションっていう、このサイクルはやめたほうがいいでしょうね。これまでもそうでしたけど、2年間やって契約を更新するときって、だいたいアジア予選の最中で、相手が相手だから問題が表に出てきていない。そういう状況で、協会としてはクビを切る理由を見つけられないし、勇気もないと思うんですよ。

浅田 その1年後だとしても、W杯出場が決まっていて、「それを実現した監督のクビを切るんですか?」というムードに世間はなるだろうしね。そうなったら、協会は余計に判断を下せなくなる。

中山 W杯で本気で勝つことを考えたら、かつての韓国やオーストラリアがヒディンク監督()を本番前に招聘して結果を出したように、日本も本大会まで1年とか1年半というときが来るまで大金をとっておいて、そこでドーンと使って世界的な名将を呼んでくればいい。それまでの3年間は、1年ずつ日本人監督を順番に起用していく感じでもいいんじゃないかな。

※オランダ人の指導者フース・ヒディンク。欧州各国のクラブやオランダ代表などの指揮を執って、数々の輝かしい実績を残してきた。2002年日韓共催W杯では、本番1年半前に韓国代表監督に就任しチームをベスト4に導いた。2006年ドイツW杯では、本番1年前からオーストラリア代表を率いて決勝トーナメント進出を果たした。

浅田 でも、日本の場合は、監督の教えによって選手が成長していき、みんなが一丸となって段階的にチーム作りを進めていく中で、W杯で結果が出ましたっていうストーリーを欲しているような気がする。最後の1年でパパッとチームを作って、ベスト8進出みたいなことをあまり望んでいないっていうか......。

杉山 それは、代表チームに対する認識がおかしいんだよ。日本は年間を通して結構合宿をやったりしているけど、本来代表って、試合の3日前くらいに集まって、パッと試合をやるもの。つまり、代表監督はセクレターなんだよ。そのときどきでいい選手をピックアップして、試合で結果を出せばいい。それなのに、日本では代表監督が選手を育てる、みたいな風潮になっている。代表に選ばれた選手がクラブに戻って活躍したりすると、代表監督がまるで"恩師"かのように語られる。それって、おかしいでしょ? どう見ても、選手を育てているのは、クラブなのにね。

――いずれにしても、W杯後から次のW杯までの4年間を、ひとりの監督に任せてしまっている日本の"慣習"に問題があるのは間違いないようですね。

浅田 最近は、W杯が終わって、その半年後にアジアカップがあるから、早く新しい監督を決めないと、っていう状況になっているけど、それもおかしな話。時間がないって言うのなら、W杯で指揮を執ってもらった監督にアジアカップまでやってもらうという発想があってもいい。結局、W杯が終わったら監督は代えるものなんだ、という"慣習"に日本は引きずられてしまっている。

杉山 やはり監督の契約を含めて"4年間の時間の使い方"というのは、真剣に考えていかなければいけないこと。そのためにも、まずは今の"慣習"は崩さないといけないだろうね。成功しているわけじゃないんだから。いろいろな方法を試して、失敗したらまた別の方法を試せばいい。そこから見えてくるものが必ずあるはず。

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