4年後に期待を抱かせたアギーレ監督の意外な方針 (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 対照的に主力メンバーが固定され、なかなか若手の台頭が進まなかった2006年ドイツ大会、2014年ブラジル大会では、日本は惨敗に終わっている。つまり、日本代表がW杯で好結果を得ようと思えば、五輪世代からの台頭が不可欠なのである。

 だとすれば、アギーレ監督が若手の登用に積極的なのは喜ばしいことだ。

 もちろん、そこに不安がないわけではない。

 自ら「五輪代表にも目を配る」と言っているのだから、いっそ五輪代表監督を兼任してもらってもいいくらいなのだが、五輪代表はすでに手倉森誠監督が就任し、半年以上も前から活動が始まっている。

 当然、日本協会内ですり合わせは行なわれるのだろうが、両者の目指すサッカーがどこまで方向性を一にできるのかはわからない。

 事実、今回のW杯でも、ロンドン五輪代表から漏れたFW大迫勇也がメンバー入りし、逆にロンドンで活躍したFW永井謙佑は外れるという"矛盾"が起きている。これは、五輪代表が日本代表とは異なるサッカー(カウンタースタイル)を志向した結果である。

 どんなにアギーレ監督が五輪世代から選手を登用したいと考えていたとしても、肝心の五輪代表が"日本代表予備軍"として機能していなければ意味がないのだ。

 また、アギーレ監督が将来性を重視するあまり、現状での活躍を度外視する――大活躍しているベテランは無視し、そこそこの若手を重用する――ようなことがあれば、選考自体の理解を得にくくなる。

 あるいは、日本代表経験のない若手を多く登用した結果、負け続けたのでは周囲からの風当たりも強くなるだろう。

 とはいえ、4年後を見据えて「将来性のある選手」を選ぶことは、過去の事例から考えても絶対に必要なこと。アギーレ監督が「切磋琢磨し、競い合うチームにしたい」とも語ったように、選手同士が競い合い、その中から若手が台頭してくれば文句なしだ。

 新監督のお手並み拝見である。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る