次期監督候補アギーレは本当に「攻撃的」なのか?

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi photo by AFLO

 ただ、2008−09シーズンもアギーレは組織を再構築できないまま、個人の力に頼ったサッカーで成績が低迷。シーズン途中に解任されている。その後、アギーレはメキシコ代表を率いて2010年ワールドカップに出場するが、このアトレティコ時代の失敗が示したのは、一流選手をコントロールする術(すべ)を持ち合わせていないことだった。

 南アフリカでのワールドカップを終えると、アギーレは再びスペインに活躍の場を移し、シーズン途中(2010年11月)からサラゴサを率いている。そのときに採用したシステムは、レオナルド・ポンシオ(元アルゼンチン代表)をアンカーに置いた4−1−4−1だった。攻撃の人数を減らして守備重視のチームに変えると、これが奏功し、見事1部残留(13位)を達成。ところが、攻撃サッカーを伝統とするサラゴサでは、その守備的戦術が批判の的となり、退任を余儀なくされている。

 そして、2012−13シーズンの途中からマウリシオ・ポチェッティーノの後任としてエスパニョールの監督に就任。クラブから守備の構築を評価されての招聘となったが、その期待に応えて13位で1部残留。エスパニョールでは4−2−3−1を基本に戦ったが、ここでも攻撃より守備をベースにしたチーム作りを行ない、2013−14シーズンも14位。ここで退任となった。

 これらを見て分かる通り、アギーレは決して「攻撃サッカー」を実践する指導者とは言えず、明らかに「守備の構築」を得意とする現実主義者の監督と言える。もちろん、日本代表の力をもってすれば、アジア相手では攻撃的に戦うことはできるだろう。しかし、アギーレのバックボーンはあくまでも守備にある。そういう意味では、少なくともイタリア時代に攻撃的と言われていたザッケローニとは、異なるスタイルの監督と言って間違いない。

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