本田圭佑の代役を探さなかった日本の不幸 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 その点、日本代表が本田の代役を見つけられなかったことは不幸だった。ブラジルW杯の敗退がドイツW杯のそれと既視感があったのは、中田英寿に頼り切りになってしまい、しかし全盛期の力は中田になかった、という悲劇と似ているからだろう。本田の場合は体力の限界ではなく、コンディションの問題が色濃く影響していたものの、イメージよりも不調という点では変わらなかった。

 では、ザッケローニ監督がなぜ本田の代役を探そうともしなかったか。

 本田の実力が突出していたにせよ、誰も変わる存在は選出されなかったし、不在時の異なるシステムが試されることもなかった。香川真司をトップ下で代用するやり方すら積極的に使われていない。これはひとつのミステリーである。

 例えば東アジア選手権の日本代表に選出された山田大記(ジュビロ磐田)は、前線でボールを収め、打開し、シュートを打てる。特質的には、本田と同じ機能を果たすことができるはずだった。山田はサイドで起用されることが多いが、プレイの流れを読む目を持ち、連係の中でいい判断をし、好機を作れるだけに、トップ下の特性を濃厚に持つ(そもそも本田も監督によっては、FW、サイド、ボランチで使われ、生粋のトップ下ではない)。

 2013年限定ならば、Jリーグで最も10番の似合う中村俊輔を対抗選手として選出するべきだった。所属する横浜F・マリノスで優勝争いをリードしていた彼のプレイは、冴え渡っていた。相手の弱い部分を読み取り、自分たちの強さを存分に引き出し、洗練された技術を出す。FKは神がかり的だった。

「チームスタイルに合うかどうか分からないし、本田の立場は?」

 そんな議論よりも先に、優秀な選手は選出されるべきだ。もし聡明なプレイを見せていた中村が入っていたら、本田や他の選手が「自分たちのサッカー......」などと酔いしれることはなかっただろう。

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