ふたりの漫画家がブラジルで考えた「日本らしいサッカー」とは?

とり・みき×ヤマザキマリ 対談 その1  プロフィール
とり・みき (写真右)
熊本県出身。漫画家。エッセイコミックなども手がける。94年『DAI-HONYA』98年『SF大将』で星雲賞、95年『遠くへいきたい』で文春漫画賞を受賞。FC東京サポーター。
ヤマザキマリ (写真左)
東京都出身。漫画家。1984年にフィレンツェの美術学校で油絵を学ぶ。1997年、漫画家として活動開始。2010年、『テルマエ・ロマエ』で2010年度漫画大賞、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。イタリア在住。共著に『プリニウス』(新潮社・7月9日発売)。

 W杯では、出場国それぞれのサッカーのスタイルを目の当たりにするのも醍醐味のひとつ。欧州で人々の生活とサッカーとの関わり方を見てきた漫画家ヤマザキマリ氏と、日本サッカーを長年愛してきた漫画家、とり・みき氏がW杯現地観戦で感じ取ったことを語り合った。

とり・みき ブラジルのスポーツバーで観戦していて、南米の実況中継はどうですか。

ヤマザキ
 感傷的ですね。ドラマチックなんですよ。やっぱりエンターテインメントっていう意味で。サッカーを単なるスポーツの観戦ではなく、「みなさん、さあこれからドラマを見てください!」という見せ場の作り方をブラジルは知っている。あれはうまいなと思いました。

とり・みき
 キャスターも「マッチ」でなくて「ショー」っていってますものね。ヨーロッパの実況はもう少しストイックで、パスをした選手の名前を言うだけという印象もあるんですが。

ヤマザキ
 イタリアの場合だと、「この選手の奥さんはどこそこのバレリーナで、すごい美人です」とか、そういう関係ないことまで言いますよ。

とり・みき たしかに、イタリアの人は実況でなくともそういうことを言いますね。

ヤマザキ やっぱりその辺は国民性が表れていますね。

とり・みき 〈盛っている〉わけですね。

ヤマザキ
 そう。いろんなところで、盛ってるんです。イタリアは、そういうセンチメンタリズムみたいなものが漂ってるナレーションが好きなんですよ。でも、多分北方のドイツだったりすると、もっと質実剛健な感じになると思うんです。

とり・みき 南米の実況を聞いていると、日本で実況がはしゃぎ過ぎだとか感情を入れ過ぎだとか言ってることなんて......

ヤマザキ
 いやいや、日本の実況が感情を入れすぎなんてあり得ない。日本の実況は、見ていて何も感じないですよ。もっと激しくやってほしい。

とり・みき Jリーグが始まった頃はもう少しはしゃいでたんですけど、それこそサッカーのことを何も解説してなかったりして、元々のサッカーファンからは批判も結構多かったんですよ。

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