「ブラジルの経験を無にしない」山口蛍が下した決断

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

 だが一方で、「まだまだ、自分の間合いでボールを奪えていない」と、世界との"個の力"の差を感じたのも確か、だ。

「(コートジボワールの)FWドログバ、FWジェルビーニョはすごかったし、ハメス・ロドリゲスには後半からの出場で(試合の)流れも雰囲気も持っていかれた。コートジボワールも、コロンビアも、トップでやっている選手はぜんぜん格が違う。世界トップクラスの選手と比較すると、個の力はまだまだ足りないのかな、と思いました。シンプルに止めて、蹴る、というのは、日本にもうまい選手がたくさんいるけど、駆け引きとか、決めるべきところで決める決定力とか、トップレベルの選手はほんまにすごい。そういう部分は、自分はまだまだやな、と思いました」

 個の力の重要性について、山口はさらに続けた。

「今回のW杯では"個"で相手とどれだけ対等に戦えるのかっていうのが、すごく大事やな、と思いましたね。そこから、チームとしてまとまってやらないと世界とは戦えないかな、と。その個の質を上げるには、Jリーグで意識を高く持ってやればできると思うし、海外に行くという選択肢もある。とにかく、ブラジルの経験を無にしないように、(世界との)個の差をこれから詰めていかないとあかんな、と思っています」

 次のロシアW杯に向けて、これから日本代表は新たに編成されることになる。山口は、そのチームの軸になるだろう。そうなったと仮定した場合、パートナーはいったい誰がいいのだろうか。

 次大会で中心となるロンドン五輪世代で考えれば、セレッソ大阪のチームメイトであるMF扇原貴宏や、FC東京のMF米本拓司らが候補となる。しかし、山口のスタイルをより生かすならば、自らが「ヤットさん(遠藤保仁)がやりやすい」と言っていたように、遠藤のようにゲームを組み立てるタイプか。その線でいけば、鹿島アントラ-ズのMF柴崎岳が適任と言えそうだ。

 柴崎は、アントラーズの大黒柱であるMF小笠原満男の薫陶を受けて、成長してきた。パスを自在に散らせるし、ここぞという場面では前にも飛び出していける。攻から守に転じたとき、相手へのアプローチも速い。遠藤が「岳は非常にいい選手」と太鼓判を押す存在でもある。山口、柴崎ともに高さがないのは気になるが、ボランチの位置でふたりがコンビを組めば、サイド攻撃だけでなく、中央からの効果的な崩しも期待できる。今回の代表が直面した、攻撃のアイデアの欠如といった課題を克服してくれるに違いない。

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