課題噴出のザンビア戦は、W杯初戦に生きる (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 その感覚は選手も同じだった。本田もまた、「(本番で対戦する)コートジボワールに3失点したら(勝つ)可能性はゼロに近い」と語る。勝つには勝ったが、内容的には負け試合である。

 だが、この試合に勝利することだけが目的なら、たとえば、一度引いてブロックを作り、相手の攻撃を待ち受けてボールを奪う。そんな「現実的」な対応も可能だったはずだ。
 
 しかし、ボランチの山口蛍が「試合中、監督からは前から(プレスに)行くように指示が出ていた」と明かしたように、ザッケローニ監督はあくまで高い位置でボールを奪い、攻撃につなげる形にこだわった。

 それこそが「このチームが結果を出してきたときのロジック」だからであろう。

 山口が「ボランチが後ろ(DFライン)に吸収されてしまった。もう少し全体を押し上げてプレスに行くべきだった」と振り返れば、香川は「もっとコンパクトに守備をやりたかった。守備の連動から(ボールを奪って)攻撃につなげられればよかった」。それは、あくまでも自分たちが目指すスタイルにこだわったからこそ、実感できた課題である。

「自分たちのプレーをトライし、そこで出た課題を(本番までの)1週間で修正していこうと、選手にも話した」

 ザッケローニ監督はそう話していたが、アフリカ勢を相手に、どう自分たちの守備のやり方をはめていくか。それを確認できたことの意味は大きかった。

 実際、本田は「スルーパスが何本か通ったと思ったら、(相手選手の)足が出てきてミスパスにさせられた」と苦笑いし、山口は「狙っているところで(ボールを)取ったと思ったら、足が伸びてきたのには戸惑った」と語っている。アフリカ勢特有の柔らかな身のこなしやリーチの長さを体感できたことは、ワールドカップ初戦のコートジボワール戦(現地時間6月14日。日本時間6月15日)で確実に生かされるはずだ。

 何より選手たちからは一様に反省の弁ばかりが聞かれ、逆転勝利に浮かれる様子はまったく見られなかった。

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