山口蛍、代表ボランチ3番手が語る「黒子の覚悟」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 鹿児島で行なわれた代表合宿では、久しぶりに代表復帰を果たしたFW大久保嘉人や、山口ら昨年から代表入りした選手のために、攻守の細かな約束事における入念な確認作業が続いた。ザッケローニ監督のサッカーについて、改めて難しさや戸惑いを感じることはなかったのだろうか。

「チームのやり方として、攻守の切り替えの速さを求められているんですが、守備から攻撃への切り替えが難しいですね。攻撃から守備については、ボールを奪われたら、そこですぐに奪い返せばいいから、それほど大変なことではないんです。でも、ボールを奪ってから速く攻める場合、周囲とのコンビネーションが必要になってくる。僕は、みんなと長い間一緒にプレイしていないので、そこまで高いコンビネーションを確立できていない。選手みんなの特徴、こういうパスがほしいとか、こういう動きをするとか、まだまだ理解しなければいけないことも多い。その辺を、本番までにしっかりやっていかないといけないな、と思っています」

 昨夏、山口が代表入りして、まだ1年も経過していない。だがその間、チームは勝てない状況が続いて、ベルギー戦で勝利して本来の姿を取り戻すまで、苦しい時期を送ってきた。それを間近で見てきた山口は、何かしらチームの成長を感じているのだろうか。

「どうですかねぇ。(代表チームに)1年もいないし、いいときのチームを知らないので、比較しようがないんですけど……。ただ、オランダ、ベルギー戦で結果が出て、チームがひと息ついた感はありました。それが、成長かどうかはわからないですけど」

 代表への関心は薄かった山口だが、メンバー入りを果たして、ブラジルW杯の舞台に立つ権利を得た。ピッチに立つためには、何をすべきだと考えているのか。

「セレッソでやってきたことを、そのまま代表でも出せるようにすること。セレッソでのプレイが認められて、これまでも代表に呼ばれて、最終メンバーにも選んでもらったと思うんで。めっちゃ活躍する、とかまで考えていないですけど、最低限、自分のやるべきことをやって、チームの勝利に貢献できたらいいと思っています。優勝? う~ん、まあ一歩ずつですね」

 ビッグマウスではない。自分のやれることをコツコツとやって、与えられた役割を地道にこなしていく。そんなタイプだからこそ、ザッケローニ監督は山口を信頼し、W杯メンバーに選んだはずだ。その期待に応え、“黒子”としての役目をまっとうするための覚悟なのか、山口の髪の毛の色は、金から黒に変わった。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る