【なでしこ】決勝進出。挑戦者として臨む澤穂希の「進化」 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 これで完全に流れを引き寄せたかと思ったが、思わぬアクシデントが起きたのは79分。左サイドをDFワン・シャンシャンが突破。有吉佐織が対峙するも抑えきれず、上げられたクロスがカバーに入った中島の手に当たる。痛恨のPK。

 このPKを決められ、試合は振り出しに戻った。しかし、ピンチをしのごうと全力で戻ってきた中島を責めることはできない。

 延長戦に突入した激闘を決したのは、延長後半ロスタイム、日本のラストワンプレイだった。主審が時計を見る。時間はほとんど残されていなかった。

「時間ないから、すぐに入って!」宮間の声が響く。蹴り出されたボールはファーサイドで待つ岩清水の元へ。頭でしっかりと合わせて勝利をもぎ取った。

 この試合で指揮官はある試みをした。後半に4-4-2システムから4-2-3-1に変更したのだ。宮間をトップ下に置き、川澄を左サイドへ。これがピタリとハマった。左に入った川澄も前半より活発な動きを見せ、宮間はトップ、サイド、中央を自由に動き回る。そしてボランチの澤も「やりやすい」と手応えを掴んだ様子だ。

 何より120分の戦いのあと口々に「楽しかった」というのだから、今後、発展させていく価値は十分にある。

 得点はすべてセットプレイから。もちろん日本の十八番である。一つ一つのアイデアは選手たちから生まれるもの。その中心にいるのが宮間だ。FKではゴールを狙うと同時に、相手GKの限界ラインを探る。決勝ゴールは必然だった。

「何度か深い位置に蹴って布石を打ってた。あそこはGKが出てこないと踏んでいた」ところへ送られた的確なボールで試合は決した。

 助走の間に味方・相手の動き出しを瞬時に見分け、蹴り分ける。「それが蹴れなければキッカーじゃない。ボールは止まってるから大丈夫」と宮間は不敵に笑った。

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