【なでしこ】W杯決定よりも大きなエース大儀見優季の「置き土産」 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 その後も、順調に加点を続ける日本が試合を完全に掌握していた。それでも攻撃の手を緩めなかったのは、2位につけるオーストラリアとの得失点差がグループリーグ通過順位に響いてくるからだ。

 前半に中島依美の追加点で2-0にすると、後半は怒涛の5ゴール奪取。そのトドメとなったのが再び吉良のゴールだった。試合終了間際、左コーナーキックのクリアボールを途中出場の杉田亜未がシュート。そのこぼれ球を「ヘディングゴールだけでは物足りなかった」という吉良がしっかりとゴールに突き刺した。

 初戦のオーストラリア戦では前半途中で交代。代わりに入った大儀見優季(チェルシーレディースFC)はこう着した前線をいとも簡単に活性化させた。「自分が出てた35分と、大儀見さんが入った10分。自分に足りないものがハッキリと見えた」(吉良)。力の差を見せつけられたが、この2ゴールはがけっぷちに立たされていた吉良にとって嬉しい結果であった。

 そしてそれ以上に彼女にとって重要だったのが、後半ラストの20分間。疲労がマックスに達するこの時間帯、ピッチに大儀見が放たれた。初めて実戦のピッチで並ぶ吉良に力がみなぎる。この三日間、イメージし続けてきた動きをぶつけた。とにかく大儀見の動きを意識し、大儀見との距離感に注意を払う。吉良の視野に常に大儀見がいた。

「ゴールに向かうパスをいつもくれるし、自分が持ったときもそういう動き出しをする。一緒に出られて本当によかった」と大儀見から受けた刺激を少しずつ手応えに変えていた。

 その大儀見はグループリーグが終了したこの時点で代表チームから離れる。限られた時間でその圧倒的な存在感を示してみせた。「満足できないなって思いが強いので、まだまだ成長しなきゃいけないって思ったし、成長していけるとも感じた」と大儀見。

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