悩めるザッケローニ。唯一の希望は絶好調・大迫勇也 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi 渡辺航滋●撮影 photo by Wanatabe Koji

 ただ、その一発さえも、大迫本人にとっては代表定着を実感できるようなものではなかったようだ。そうでなければ、メンバーの当落線上にいる選手が、敢えてワールドカップイヤーに海外へ移籍するというリスクを冒すはずがない。

 果たして、その賭けは大成功だったと言える。

 新しい環境の中、大迫はデビュー戦となったデュッセルドルフ戦でスタメン出場を果たすと、いきなり挨拶代わりの1ゴール。その後も「助っ人外国人FW」として活躍を続け、これまでに14試合で計6ゴールをマークしているのだ。この数字は、チーム最多タイ。シーズン途中に加入したにもかかわらず、である。

 今季のホーム最終戦となった5月4日のボーフム戦。それまで4-2-3-1の1トップを務めてきた大迫は、その試合で初めてトップ下の位置でスタメン出場(ちなみに、試合途中からトップ下を務めることはあった)。

 すると、「(トップ下で)いちばん苦労したのは守備のところです」と試合後に振り返りつつも、1ゴール1アシストという文句なしの結果を残し、見事にキッカー誌のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれるほどのパフォーマンスを見せたのである。

 注目すべきは、この試合で決めた先制ゴールだ。それは、大迫に対するチームメイトからの信頼の高さをうかがわせるものだった。

 前半31分、相手GKと1対1になった1トップのウッドは、自分でシュートを狙えるにもかかわらず、左に上がってきたフリーの大迫へパス。普通に見れば、無人のゴールに流し込んだ大迫の"ごっつぁんゴール"だったかもしれないが、あの場面で味方からパスをもらえること自体が、助っ人外国人の大迫にとっては大きい。それこそ、結果を残しているからこその勲章だと言える。

 また、この試合は今季限りで退団が決まっているベテランFWラウトのホーム最終試合だったのだが、そのラウトが後半途中から大きな歓声を受けてピッチに登場すると、大迫がラウトの"お別れゴール"をアシストしたのだ。ゴール裏サポーターが愛するレジェンドのメモリアル・ゴールをお膳立てしたことで、サポーターからの信頼もさらに高まったはずだ。まさしく、助っ人冥利に尽きる仕事ぶりだった。

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