北嶋秀朗から工藤壮人へ。「代表入りのために今、必要なこと」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Nagata Youhei/AFLO SPORTS

 2014年4月(7~9日)の代表合宿前には、「最後の代表アピール。死んでこい!」とメールを送ったという。

「そんなことを言わなくとも、工藤は十分、承知していると思いますけど」

 北嶋は食べ終えたパスタ皿を眺めた。

「W杯メンバーの当落線上にいるのは、工藤が一番わかっていると思います。もちろん、自分としてはブラジルで代表として戦ってきて欲しい。ただワールドカップは大事だけど、自分は“レイソルの工藤”という目で今も見ている。レイソルというクラブで活躍してこそ、それが代表につながるんです。だからあえて工藤に言うなら、『点を取れ』ということ。それはレイソル時代から言い続けてきました。

 例えば2011年のクラブW杯のサントス戦、レイソルのFWの方がいい仕事をしていたと思うんです。でも、ゴールを決めたのはボルジェスだった。それで彼の方が評価される世界。FWはどんな形でもゴールをしないと評価されない。点以外にどれだけいい仕事をしても、次の試合で使われる保証はないんです。だから、自分は引退を決めました。点が取れなかったFWが次の年も契約してもらうなんてあり得ないですから」

 深夜2時、店の階段を下りる体は重そうだった。筋力が減った分だけ、膝の古傷の痛みは増したという。リュックを背負う北嶋は、「少し体重を落とそうと思って、自転車を使うようにしました」と言い足し、照れくさそうに頭をかいた。

 北嶋には、いつか工藤に贈ろうと思っている言葉がある。

「『苦しいときこそ、柏の9番は輝く』。これ、工藤にいつか言いたいんです。でも、なかなかそのタイミングがないんすよぉ。あいつはゴールをとり続け、一人で乗り越え、大きくなってしまうから」

 かつてのライバルは、ゆっくりと目尻を下げた。

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