【なでしこ】初代表の猶本光は、レギュラーを奪えるか (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text &photo by Hayakusa Noriko

 そしてもうひとり楽しみな選手は、浦和の守備の要・高畑志帆(25歳)だ。持ち前のフィジカルでコンタクトプレーのみならず、攻守の空中戦に絶対の自信を持つ。リーグでの得点もセットプレーからのヘディングシュート。不動のセンターバック・熊谷の穴を埋める活躍を見せれば、なでしこの守備ラインにこれまで存在しなかった競争が生まれる。好ましい現象だ。「代表では、どんなことでも全部吸収してきたい」という高畑。スキルは十分。この短期間でどこまでなでしこ流を自分のものにできるかが勝負だ。

 こうしたワールドカップの出場権がかかった実戦でチャンスが巡ってくるとは本人たちも驚きだったに違いない。「(なでしこ入りは)まだ先のことだと思っていた」と、もらした猶本の言葉にも納得できる。

 なぜなら、このなでしこ入りはヨーロッパ組の招集が叶わなかった代案措置の意味合いが強いからだ。大野忍、近賀ゆかり、安藤梢、熊谷紗希、岩渕真奈、田中明日菜ら馴染みの選手たちは、アジアカップがAマッチ認定されていないため、招集が叶わなかった。

 エース大儀見優季はグループリーグのみの合流。まさに前後左右のコマを削がれた状態だ。W杯出場権枠「5」は正直緩い設定である。が、目指すのはアジア制覇だとするならば、このアジアカップは茨の道を通らねばならない。だからこそ、このトーナメントでもまれながら、猶本ら若手が奮起することが不可欠なのである。「いつかはあそこに」という気持ちでは務まらない。必要とされているのは実践力だ。

 これまでの選手のような“お試し”期間はなく、中一日の連戦で選手層に余裕もない。必ず出番はやってくるはずだ。比べられる相手が招集されていない今、これ以上ないチャンスだと捉え、真のなでしこ入りを果たしてもらいたい。

 まずは8日、ニュージーランドとの親善試合でアジアカップ出発前の腕試しだ。

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