W杯メンバー発表直前。ザッケローニは工藤壮人の何を買っているのか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Nagata Youhei/AFLO SPORTS

 例えば意識的にオフサイドラインにポジションを取る。DFを牽制しつつ、自分を気にかけない選手、首を振って確認する選手を見極め、そこで生まれる隙間を探し出す。工藤が自由な状態でシュートを打てる機会が多いのは、準備の時点で優位に立てているからだ。

「工藤は1~2歩、わずかにズレることでボールを受けることができているんですよ」

 そう証言したのは、工藤をユース時代から見続け、ともにプレイしてきた柏の主将、大谷秀和である。

「パスを出す前の工藤はディフェンダーのすぐ近くにいるんですけど、パスを出すときにはズレていて、そのパスは通るんです。ズレると言っても、外に開きすぎるとそこからまたボールを持ち運ばないといけない。でも、あいつはツータッチでゴールできるイメージが常にある。ボールの置き所が良いし、キックもうまいから、ゴールの決定力が高いんです」

 2013年シーズン、アルビレックス新潟戦で挙げたゴールは、実に工藤らしい。CBの視界から消え、左サイドからゴール前へのクロスを引き出すと、オフサイドラインを破って飛び出し、右足インサイドでコースを変えてゴール右隅へ流し込んだ。

 彼はスペイン語で「Desmarque」(マークを外す)という技術が傑出している。大柄でも、飛び抜けた瞬発力や跳躍力があるわけでもない彼が容易にゴールできるのは、そこに理由がある。

「工藤は“遠くの選手”と駆け引きできているんですよ」と大谷はFWとしての特質について解説を続ける。

「ナビスコ(カップ)の大宮(アルディージャ)戦、自分がドリブルをして、工藤はサイドバックと併走していたときのことです。パスを出そうと思ったんですが、サイドバックが止まったから、オフサイドだと判断しました。でも彼はサイドバックと駆け引きしながらセンターバックの位置も見ていて、オフサイドではなかったんです。遠くの選手との駆け引きは高度な技術で、逆にあいつは、センターバックと駆け引きしているときはサイドバックを見ていますね。問題は出し手で、オフサイドと錯覚してしまう場合があるんです」

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