W杯メンバー発表直前。ザッケローニは工藤壮人の何を買っているのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 長田洋平/アフロスポーツ●写真 photo by Nagata Youhei/AFLO SPORTS

 実際の彼はプレイ選択にほとんど誤りがない。それはたとえ失敗しても、気持ちに焦りや動揺が生じず、悪いイメージを引きずらないからだろう。フラットな心理状態でいられる。

「ピッチで一喜一憂はしません。(失敗しても)10回でも20回でも、ゴールをとるための動きを繰り返して。たとえアバウトなボールでも、ゴールに仕留めてやる気持ちでいます」

 青年は手元にあったグラスの水を飲み干した。「野」は、野心や野望にも通じるかもしれない。

 柏レイソルに所属する工藤壮人はプロ6年目、ゴールによって道を切り開いてきた。

 2010年シーズンはプロ2年目にして10得点を記録、"ゴールした試合は不敗"という伝説を作り、J1昇格に貢献した。2011年シーズンは7得点でJ1リーグに優勝し、クラブW杯でも得点を記録。2012年シーズンにはリーグ戦でのゴール数を増やして13得点、天皇杯も3得点で大会制覇に寄与した。そして2013年シーズンはJリーグで19得点、ACLでも6得点を挙げ、「AFCチャンピオンズリーグ ドリームチーム」に選出されている。ナビスコカップ決勝では唯一の得点を放り込み、MVPに選ばれている。

 過去4シーズン、これほどゴールを量産し、なおかつチームにタイトルをもたらしたFWは、Jリーグでは工藤しかいない。

「俺の場合、試合が始まってすぐにゴールをとってやろう、みたいに動き出すことはしないですね」

 そう語る工藤は、闇雲に刀を振り回すようなゴールへのアプローチはしない。

「まず、敵や味方を観察します。とくにセンターバックの自分への食いつき方、どこに視線を投げているか。その中で、センターバック2枚の共通の死角を見つけます。受け渡しもできない、ここにいると全く見えないというポイントがあるんです。これは実際に対戦してみないと分からなくて。すぐに見つかるときも、なかなか見つからないときもありますね」

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