最後の代表候補合宿終了。ザッケローニの思惑以上の成果あり?

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 梁川剛●写真 photo by Yanagawa Go

 むしろ注目したいのは、アピール合戦になったり、チーム戦術に縛られ過ぎたりせずに、それぞれが要所、要所で持ち味を見せたことだ。

 青山敏弘(広島)や齋藤学(横浜FM)、工藤壮人(柏)ら招集経験が比較的多い選手は、その優位さを証明し、戦術理解度の高さを見せた。その一方で、例えば塩谷司(広島)、昌子源(鹿島)ら初招集のDFたちも、指揮官の要求どおり、鋭いくさびのパスを何度も通していた。

 そこには生き残りを懸けたピリピリムードはなく、活気ある雰囲気が保たれ、笑顔が溢れていた。その様子は昨年7月、同じく代表経験の浅い選手ばかりで臨み、優勝を勝ち取った東アジアカップのときと似ていた。

 その理由として考えられるのは、選手たちの置かれている立場が同じだったことだろう。前述したように、この合宿に呼ばれたのは、ザックジャパンでプレイしたことがほとんどない選手ばかり。そのため、誰もがチーム戦術の吸収に貪欲で、普段とは違うスタイルに刺激を受けているようだった。

「自分が出来ることはやった。いろんな選手と出会えて刺激があったし、こういう場所に来るのは楽しいと思った」と振り返ったのは、ボランチの柴崎岳(鹿島)だ。トップ下とサイドハーフを務めた南野は「すごく新鮮だったし、貴重な経験ができた。この経験をチームに帰って生かしていきたい。レベルアップに繋げたい」と語った。

 これとは対照的に、それぞれの立場が異なり、チームとして足並みを揃えられなかったのが、3月5日のニュージーランド戦だ。
 
 このときのチームには「ポジションが約束されていて、無理する必要のない選手」「所属クラブで出番やポジションに恵まれず、試合勘を取り戻したい選手」「当落線上で、アピールに努めたい選手」が混在していた。その結果、ニュージーランド戦の後半は、選手のコンディションや意識にバラツキが見られ、相手に付け入る隙を与えてしまったのだ。

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