合格点は岡崎慎司と長友佑都だけ。日本代表史上に残る緊張感の欠如 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 試合後、選手も監督も「最初に4点入ってしまうと、その後の戦い方は難しくなる」と述べた。「4点も入ると気が緩くなるもの」。それが常識と言わんばかりだった。だがそれは本当に常識だろうか。

 そうしたケースもある。それは認める。だが、W杯まで残り2試合という段階で、「緩むのは仕方がない」と言い放つのはダメだ。言語道断。ただでさえ緩い試合はさらに緩くなる。地球上を支配し始めているW杯の緊張感を、日本人は共有できないことになる。W杯を楽しみにしているファンに対して、失礼ではないか。

 このニュージーランド戦は、23人の最終メンバーの座を争う試合ではなかったのか。敵はニュージーランドではなく、自分たち。そうした位置づけではなかったのか。にもかかわらず気が緩んだのであれば、チーム内にさほど競争原理が働いていないことを意味する。

 実際、W杯に出場した過去4大会に比べ、23人の選手はとても選びやすい状態にある。22番目と23番目。流動的なのはせいぜい2人。今回の招集メンバーを見た段階で、ほぼ「無風」は見えていた。

 出場している選手に、代表でプレイする歓びが感じられないのだ。メンバーとの再会は3ヵ月ぶりだ。もし選手が言うとおり、今までとは次元の違うサッカーを追求しているなら、点差は関係ないはずだ。W杯前に特有の緊張感。これまでの代表チームにあって、ザックジャパンにないものがこれだ。それが見えてしまっているので、ファンとしても楽しむことができない。

 ザックジャパンが、それと引き替えにものすごく強そうな雰囲気を醸し出しているのであれば、なんとか我慢できる。緩んだと言っても、その片鱗が随所に見えたなら、国立競技場も少しは喜んだだろう。

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