NZ戦で見えた
「強かったころのザックジャパン」との決定的な違い

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「足下、足下のパスばかりにならないで、スペースへパスすることでダイナミズを出さなければならない。今日のように10m四方で細かいパスをつなぎ続けていても何も起こらない」

 そして、このことと関連づけるかのように、こんなことも語っている。

「香川(真司)と本田(圭佑)の関係だが、彼らは近い距離でプレイするのではなく、本田には(ペナルティ)エリア内にどんどん入ってほしい。香川はトップ下でも生きることは分かっているが、左サイドでも能力を発揮できる」

 この試合、本田と香川を中心にして、それなりにパスは回っていた。公式記録によれば、日本のボール支配率は57.8%である。

 しかし、その内容はというと、よく言えば個人個人のアイディアが融合したイマジネーションに富むものだったが、悪く言えば場当たり的で安定感に欠けるもの。そして、これこそが2、3年前の強かったころの日本代表との決定的な違いである。

 当時の日本代表は縦にボールを出し入れし、相手を押し込んだうえで、さらに長友佑都、内田篤人の両サイドバックがDFラインの背後を取るような攻撃ができていた。縦方向への力強さがあり、展開も大きかった。

 ところが、ニュージーランド戦に限らず最近の試合では、細かなパスワークばかりが目立ち、結果、パスが回っていても決定機にはつながらない。昨年10月の東欧遠征の2試合(セルビア戦とベラルーシ戦)などがいい例だ。

 そうした現象は、いわゆる"悪いボールの失い方"にもつながる。例えば、ニュージーランド戦の49分のシーンが典型的だ。

 日本は細貝萌のボール奪取から、清武弘嗣、本田圭佑、香川真司がペナルティアーク付近に集まってきてパスをつなごうとした。ところが、そこでボールを失うと、ニュージーランドの右サイド(日本の左サイド)からの危ういカウンター攻撃を受けてしまう。

 全体が中央に偏りすぎた結果、サイドでの守備への対応が遅れ、相手サイドバックにドリブル突破を許したからである。

 まさにザッケローニ監督が指摘している、香川と本田の距離感の悪さから生まれたピンチだったというわけだ。

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