出場機会の減少は香川真司のプレイにどのような影響を与えるか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by GettyImages

 だが、観衆を唸らせるプレイ、自分の想像を超える好プレイは、それなしには生まれない。特に香川はアクション系の選手だ。動きの中にプレイの活路を見いだすタイプなので、極限状態にある実戦の方が、思わぬプレイは飛び出しやすい。

 ドリブルは代表的なプレイになる。それを後押しする冒険心、勇気、負けじ魂は、本番でないと得られない。

 話は変わるが、香川がマンUで輝けない大きな理由のひとつは、その高揚感、精神的なノリに欠けるからだ。自由奔放なプレイを見たことがない。プレイが踊っていない感じなのだ。100の力が100出ていない。70~80止まり。戦術が理解できていないこと、ビッグクラブならではの敷居の高さ、そこで活躍できていない焦り、などが悪循環を呼んでいるのだろう。それが、どこかおどおどした萎縮したプレイを招いている。そんな気がする。

 例えば昨年11月に行なわれたオランダ戦では、その真逆のようなプレイを見せた。出場したのが後半からで、試合が若干ブレイクしていたこともある。厳密なプレイが求められない気楽さもあったのか、動きはそれこそ踊るようだった。巧緻(こうち)性に富んだ俊敏な動きは、いつも以上にダイナミックで開放感に溢れていた。マンUの香川が別人に見えるほど、ひときわ映えて見えた。

 3月5日のニュージーランド戦では、どちらの香川が見られるのか。正直、期待より不安の方が勝る。

 11月当時、香川はマンUで今より断然、出場機会に恵まれていた。そのピークとオランダ戦、ベルギー戦は重なっていた。プレイの高揚感を維持したまま日本代表に合流した。今回のようなタイミングで日本代表に合流するのは初のケースになる。マンUの香川が、日本代表の香川になってしまう恐れがある。

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