新生U-21総括。ベスト8敗退も悲観する必要はなし

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi photo by Getty Images

 それに対して日本は、所属クラブで常時、出場機会を得られていない選手が多い。加えて、チームは今年になって結成されたばかりで、コンビネーションや戦術が磨かれているわけでもない。しかも、Jリーグは今、オフシーズンなので、選手のコンディションや試合勘が万全というわけにはいかなかった。「妥当な結果」とも、「悲観する必要もない」とも言ったのは、こうした理由からだ。

 今回のイラクぐらいのレベルの相手に対し、2年後、勝てるようなチームになっているかどうか――。

 それが、このチームの強化、成長を見ていくうえで、ひとつの指針になる。そして、監督や選手たちが、そのレベルを肌で感じられたのは、今大会における大きな収穫だ。

 当初の狙い通り、監督と選手があらゆる意味で、国際大会を経験できたことはアドバンテージになる。2年後を見据えたチームで参加したのが、日本とオーストラリア、中国だけだったのだから、なおさらだ。

 直前にホテルが変更される。練習場が毎回変わる。決勝トーナメントに入ると練習場が直前まで決まらない。グループリーグは中1日の試合間隔……。次回大会では改善されるかもしれないが、それを期待できないのが、「アジア」という地域である。次回も中東での開催が濃厚という情報があるため、改善されるのを期待しないほうがいいだろう。

 1月5日から始まり、約2週間という短い間だったが、「まずは守備から入る」という指揮官の指針が示されたことも大きいはずだ。

 そうした中で目に付いたのは、選手たちの理解力の高さや柔軟性だ。もともとオフ・ザ・ボールの動きに長(た)けた選手が多く選出されていたこともあり、ハードワークやチャレンジ&カバー、プレッシングなどの守備戦術はスムーズに浸透していった。

 また、オーストラリアとのグループリーグ第3戦で、練習で一度も試さなかった4-3-3をスムーズに機能させたように、選手たちの戦術理解度の高さも光った。指揮官は言う。

「このグループは4-4-2をベースに、4-3-3、4-2-3-1、4-5-1、4-1-4-1というのが、全部できそうなメンバーが揃っていると練習で感じた」

 手倉森監督が昨年12月まで仙台の監督を務めていたこともあり、今回は技術委員会が選手選考を行なったが、大会を終え、指揮官は早くも選手の発掘に意欲を見せている。

「思っていたよりも大会が早く終わってしまったけれど、逆に、チーム作りの時間をもらえたとポジティブに捉えている。今大会の彼らとしっかり競争できる選手を発掘し、組み合わせていくことをこれから真剣にやっていきたい」

 3月下旬には、国内合宿が行なわれる予定ともいう。果たしてそのとき、どのようなメンバーが選ばれるのか。リオ五輪で金メダルを目指す戦いと、生き残りを懸けたサバイバルは、まだ始まったばかりだ。

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