皇后杯。INAC神戸が4冠達成も、「1強時代」は終焉か!?

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 一時はチャレンジリーグ降格の危機に面したこともある。「一度崩れたことで、本当にみんなで話し合った。あれを乗り切れたことが大きい」(山崎)とメンタル面での成長が皇后杯決勝という大舞台での善戦につながった。徹底したのは守備。ただ一辺倒に引くのではない。高い位置からプレスにいく場面とブロック形成をして待ち構える場面を巧みに使い分け、ボールを持った相手に対しては許す限り、時間差であろうと最低2枚はマークに入るシーンが終始見られた。厚い攻撃力を誇るINACがボールを保持しながらも、なかなかシュートまで持っていけなかった要因がここにある。

 その中心となっていたのがキャプテンの上尾野辺だった。この日の彼女の運動量は群を抜いていた。INACの要注意人物であるチ・ソヨンの足かせとなり、また攻撃に転じた際には起点にもなり、はたまたゴールゲッターにもなる。上尾野辺のプレイに引き上げられるように、新潟の集中力は時間が経過するごとに高まりを見せ、ついに最後まで途切れることはなかった。

 そしてここにマッカーティーの守備意識の高さも加えておきたい。ただ前線でボールを待つだけでなく、チームの戦術、意図を汲み取り、自ら中盤まで落ちてボールを追う姿は“助っ人選手”ではなく、“新潟の一員”としての働きだった。ゴールを奪うだけでなく、味方を生かすパスを自在に操るエースは、チーム内に必要な競争心を植え付け、大いなる刺激を与えた。所属するワシントン・スピリットのオフを利用してのわずか3ヶ月という短い期間ではあったが、マッカーティーの加入は選手たちの意識を確実に変えたのである。

 INACの常勝というイメージが続いたこの2年。久しぶりに出会った拮抗したゲームだったような気がする。結果が容易に想像できる勝負事は、魅力が半減するものだ。それが続けばさらにマンネリ化が進む。1強での日本女子サッカー牽引に、限界を感じざるを得なかった昨今。新潟の健闘が新たな明るい兆しとなることを願う。


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