INAC優勝で幕を閉じたIWCC。その裏で揺らいだ大会の存在意義 (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text &photo by Hayakusa Noriko

「これから練習を重ねればもっと成長できる」と話した大儀見の言葉に虚勢はない。世界へ挑戦するために日本を巣立ってから初となる凱旋試合は、大儀見にとっての現在地と未来の方向性を確認できる願ってもない舞台となったのではないだろうか。

 こうした選手たちの活躍の影で、IWCCは大きな壁にぶつかっている。そもそも今大会はクラブチームが国際的に戦う場が極端に少ないことから、男子のクラブワールドカップのような大会を目指して発足したもの。現在、ヨーロッパでは女子にもチャンピオンズリーグがあり、各国の強豪がしのぎを削る場が整っている。しかし、アジアではその機会は皆無だ。親善試合ではなく、真剣勝負の場が必要だった。

 昨年はヨーロッパチャンピオンのオリンピック・リヨンが参加し、INACを延長戦の末に破り、初代女王となった。盛り上がりを見せたものの、今年はヨーロッパチャンピオンであるヴォルフスブルクの参加が叶わなかった。これが何を意味するか。ヨーロッパチャンピオンが参加辞退する大会というイメージがついては、今後、各大陸女王たちの参加モチベーションが下がってしまうことが懸念される。日本だけでなく、各国が自国では経験できないレベルの高い大会だと実感できることが重要だ。

 開催日程の調整は必須だろうが、世界の女子クラブチームの意識が統一されなければ、IWCCの国際的発展は難しい。この大会出場がステイタスにつながらなくてはならない。「選手としてできることは、運営の方にはまた開催したいと思ってもらえるような、見に来てくださる人たちには、また見たいと思ってもらえるようなプレイで大会の知名度を上げること」と川澄も危機感を持った上で自身の決意を新たにしていた。

 女子版クラブワールドカップへと歩みを進めることができるか、クラブチームの国際交流トーナメントに落ち着いてしまうのか、IWCCは発足2年目にして早くも岐路に立たされている。

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