INAC優勝で幕を閉じたIWCC。その裏で揺らいだ大会の存在意義 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text &photo by Hayakusa Noriko

 十分な大量得点ではあるが、細かなズレを修正できていれば、さらなるゴールが生まれていただろう。右足首負傷で戦線離脱していた澤穂希も復帰し、わずか20分のプレイだったが、復調をアピール。90分、終始チェルシーをINACは圧倒していた。

 対して、今年7月に大儀見優季の移籍先として注目されたチェルシーはイングランド女子FAカップ2012で準優勝しているものの、今シーズンはケガ人続出でFA女子スーパーリーグでは7位と低迷。若い選手も多く、発展途上のチームである。新加入である26歳の大儀見ですら、同年代のエニオラ・アルーコに言わせれば、「多くの経験を積んだ尊敬すべき国際的な選手」ということになる。今大会でキャプテンを任された大儀見だったが、それは日本で行なわれた大会用のサービスではない。

「周りの成長を促しながら、自分も成長することを求めてこのチームに来た」と語る大儀見は以前から、イングランドでプレイすることを視野に入れていた。

 そして選んだのがチェルシー。今やなでしこジャパンでも不動のエースへと成長した。と同時に、大儀見には下の世代から自分のパートナーになる選手たちを伸ばす使命も課せられた。

 それらを踏まえると、新天地は今の大儀見にはピッタリだと言える。自らチームメイトとの距離を縮め、積極的にコミュニケーションを取る。ストイックだったドイツ時代とは正反対だ。いい意味で肩の力が抜けている。周りからの信頼を得た今季は、メンバーの補強が成功すれば、チームにとっても、大儀見にとっても飛躍の年になるかもしれない。

 そんなチェルシーの準決勝、決勝は攻守において危なっかしい場面が多かった。それもそのはず。今の時期、チームはオフの真っ只中。急遽この大会への出場が決まり、大急ぎでチーム作りをしていたのである。来季のメンバーとして確約されている選手は半数程度。アメリカからオフシーズンのみチームに参加している選手もいる。

 全員が揃って練習を開始できたのは初戦の2日前のことだった。イングランド代表のMFウィリアムスも今オフ獲得した選手。決勝戦でのゴールはもちろん、ボールを配給するチームの肝となる動きを担う。大儀見とのコンビも日に日に息が合ってきたところだ。

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