あえてザッケローニに要求する。まだ物足りない選手起用法 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text Sugiyama Shigeki
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 幸いにも選手のクオリティは、南アW杯当時より、少しばかり上がっている。世界も進歩しているが、日本もなんとか遅れずについていっている。日本のサッカー界はいま、そういう状態にある。できれば本大会でダークホースになりたい。ベスト8を狙いたい。「最低5試合。最大7試合戦うつもりでやってきた」 とは、U−17W杯に臨んだ吉武博文監督の言葉だが、ファンは、代表チームが最低5試合を戦う期待を抱きたいという視点で、ザックジャパンと向き合っているはずだ。

 そうした視点でザッケローニのこの2連戦の選手起用を見ると、まだまだ物足りなさを感じる。5試合を戦うだけの多彩さとスケール感に乏しい。ザッケローニにはもっと、もっとアイデアを発揮してもらわないと、満足はできない。
 
 例えば、だ。柿谷と大迫は同じタイプのFWではない。そのことは、7月に行なわれた東アジア杯、対オーストラリア戦でも明確になったはずだ。大迫は1トップ豊田陽平の下で先発し、活躍したというれっきとした事実がある。進境著しい大迫をチーム力に反映させようとすれば、大迫を柿谷と同じポジション(1トップ)ではなく、柿谷の下に据えてみる手もあったと思う。

 細貝を守備固めに入れる手もあるが、柿谷の下で大迫を使い、例えば本田を一列下げてみるという手もあるはずだ。

 守備固めというなら、両サイドバックをサイドに2枚縦に並べる(例えば長友や内田を酒井高、酒井宏の上に入れる)手もある。このほうが守備固めの方法としてははるかに攻撃的だ。

 そのような少しばかり意外な采配をしていかないと、可能性は膨らんでいかないと僕は思う。何より選手が新鮮な気持ちでプレイできない。

 この2連戦で日本が強豪相手に大健闘した理由は、まさにその新鮮さにあったと思う。選手を入れ替えたことでマンネリズムから解放された結果である。メンバーの固定化は可能性を減退させる。小さくまとめてしまう危険が大なのだ。それではW杯でダークホースになることはできない。5試合を戦えないと僕は思う。

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