大迫、山口が見せたザックジャパン活性化の「匂い」

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 ザックジャパンの守備戦術に、前線から連動してプレスを仕掛け、ボールをサイドに導いて奪い取るというものがある。その際、最前線でパスコースを限定し、どちらのサイドに追い込むのかはっきりさせるのが1トップの役割で、それを大迫は忠実にこなした。

「大迫が出どころをすごく抑えてくれていたから、僕らも対処しやすかったし、あれで2次攻撃、3次攻撃につながったと思う」と語ったのは今野泰幸だ。相手陣内でボールを引っ掛け、ショートカウンターを繰り出す場面が少なくなかったのも、前線からの守備が機能していた何よりの証だろう。

 欲を言えば、もう少し深みを作りたかった。屈強な相手センターバックとの駆け引き上の選択だったのかもしれないが、ポストプレイをこなす際、中盤に下がってくることが多かった。もう少し高い位置で踏ん張ることができれば、前半から敵陣でゲームを進める時間が増えたかもしれない。自身のポストワークに満足していないのは、「もう少しうまく収められればよかったんですけど......」という言葉からも察しがついた。

 とはいえ、東アジアカップのときはトップ下として起用され、1トップとして先発した9月のグアテマラ戦(3-0)では45分で代えられていた。得意とするポジションで長時間起用されたのは今回が初めてで、「課題は、こういう試合で(力を)出し切ってこそ見つかるものだから、いいことだと思います」と言うように、大迫にとって大きな前進だったのは確かだろう。

「前日練習のときから先発かもしれないと思っていた」という大迫とは対照的に、山口はスタメンになるとは「予期していなかった」と振り返った。

 長谷部と組んだ前半はバランスを取ることに腐心し、後半はバランサーの役割を遠藤に託して、ファンデルファールトの監視役を務めながら、広範囲に動き回って、前線にも飛び出した。

 大会MVPに輝いた東アジアカップでは、球際の強さとボール奪取力でアピールし、この試合でも寄せの素早さ、簡単に当たり負けしない強さを証明したが、セレッソ大阪で2列目をこなしているように、攻撃的な役割をこなせるのも山口の強み。そのユーティリティー性は、細貝萌や高橋秀人とは一線を画す、彼ならではの魅力と言える。

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