欧州にも対抗し得るサッカー指導者が日本に生まれた (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by GettyImages

 控えを控えとして扱わないところ。吉武監督の采配は、その点においてヒディンクさえも超えていた。恐れ入ったのは4試合で、メンバー21人全員をローテーションで綺麗に使い切ったことにある。きわめて平等に、である。

「最高7試合。最低でも5試合戦うつもりでいますから、このやり方がベスト」と吉武監督。選手を複数のポジションで、戦術的交代を駆使しながら起用した。中には、2戦目に右ウイングで起用した中野雅臣選手を、3戦目にはセンターバックで起用する斬新な采配も含まれている。

 吉武監督は説明する。「ボール支配率を上げようとすれば、最終ラインに的確なフィードができる選手が必要なのです」と。3戦目で中野選手とセンターバックでコンビを組んだ鈴木徳真選手も本来はMF。見る側をアッといわせたわけだが、この台詞にも聞き覚えがあった。

 かつて、バルサのコーチを務めていたバケーロに、僕はこう尋ねた。

「なぜバルサは本格的なセンターバックを補強しないのか」

 すると彼は、こう答えた。「MFの選手を下げればいいだけの話。バルサはそうした考え方のクラブなのです」と。その時、バルサが最終ラインに起用していたのはフィリップ・コクー。その後も、マルケス、マスチェラーノらを中盤から下げる形で起用した。

 フアン・マヌエル・リージョはこう述べた。

「良いサッカーをするために、そうしているのではありません。勝つサッカーを目指すためにそうしているのです」

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