なでしこジャパン2013年、佐々木監督の総合評価は? (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 これまではボールを動かして、サイドバックが上がってクロスなり、シュートなりに持ち込む形が強みでもあった。しかし今、日本がこの戦い方で世界の強豪を崩せる可能性は低い。それだけ相手も日本を攻略し、ブロックを作ってくるからだ。自陣でいくら横パスを流しても、スペースは生まれない。そこで縦攻撃――となる訳だが、今までの攻撃以上にタイミングと精度が命だ。一番嫌な場所を、相手は全力で阻止するはずだ。ポイントは高い位置で起点をとること。佐々木監督には狙いがあった。

「実はチャンスなのは一度ボールを取られたとき。切り替えの速さでボールを奪い返したときに再びチャンスになる。ボランチで取られると厳しいけど、高い位置にいれば不可能ではない」と言い切る。であれば、今は切り替えが間に合わず、奪いきれていないことになる。

 もちろん終始このパターンで仕掛けるのではないが、どちらにしてもこれまで以上の判断の速さとイメージの共有、豊富な運動量とカバーリングに磨きをかけなければならないことだけは確実だ。取り組むべきことは多い。

 そして、新たに走り出した一年の最後に佐々木監督が行なったのは、狭間世代に国際経験を積ませることだった。

 10月に中国で行なわれた東アジア競技大会に自ら率いたのはU-23女子代表。本来であれば昨年のU-20女子代表を卒業した面々を揃えたいところだったが、なでしこリーグはまさに佳境を迎えおり、チーム事情からメンバー選考はかなり苦しんだ。

 実際は試合に出場できていない選手も多く、調整不足は否めなかったが、強行したのにはそれだけ期待があったからだ。対戦した中国、北朝鮮はほぼフル代表として戦える人材が揃っていた。当然ながら日本は完敗を喫したのだが、佐々木監督が頭を抱えたのは選手たち自身が逃げ腰になったことだった。

「ここまで来て、人任せにして逃げていたら身も蓋もない!こんな機会そうそうないのにもったいない......」

 U-23女子代表は、なでしこチャレンジに入れるか入れないかという層の選手たちを招集した形になっている。この層からの底上げが必須だと感じるからこそ佐々木監督自ら指揮をとったのだ。

 選手たちには厳しすぎる現実だったかもしれないが、ゲーム体力、技術、メンタルすべてにおいて他国より劣っていたことはその身を持って感じたことだろう。意外にも選手たちは明確な課題を突きつけられたことで、前を向けたようだった。

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