2013.10.27

福田正博「20年前のドーハは
『悲劇』じゃない」

  • 飯尾篤史●構成 text by Iio Atsushi photo by AFLO

 2戦を終え、オフトが動く。

 福田とセンターフォワードの高木、都並の代役として左サイドバックに入っていた三浦泰年を先発から外し、長谷川健太、中山、勝矢寿延を送り出し、システムも4−3−3に変えて北朝鮮との第3戦に臨んだ。

「スタメン落ちも当然だと思ったよ。申し訳ないけれど、自信を持って戦えるメンタリティ、コンディションではなかった。自分の代わりに出ることになった(長谷川)健太さんとは同部屋だったけれど、精神的に参っていたのか、会話した覚えがない。短期決戦というのは(波に)乗ったもの勝ちというところがあるけれど、唯一、乗れそうな場面で決められず、自信を取り戻せなかった。逆に、ゴールを決めて勢いに乗ったのが、ゴンだったよね」

 イラン戦の終了間際にゴールを奪った中山は、北朝鮮からもゴールをもぎ取った。カズも2ゴールを決め、北朝鮮に3−0で勝利した日本は、4戦目、カズのゴールで韓国を1−0で下し、ついにグループ首位に踊り出る。

 そして10月28日、強い日差しの中でキックオフされたイラクとの最終戦----。カズのゴールで前半5分に先制したが、その後、イラクの反撃に遭い、後半9分に同点に追いつかれてしまう。その5分後の後半14分、長谷川に代わって途中出場した福田は、難しいゲームだということを強く感じ取っていた。

「ずっとピンチの連続で、みんな混乱していたからね。スタジアムの雰囲気も異様だったし。どうにかしてこの流れを変えなきゃいけないと思ってピッチに入ったけれど、相手はうまくてボールが全然取れなくて、スムーズに試合に入れなかった」

 だが、福田の投入によってゲームはにわかに動き始め、10分後の後半24分、ラモスのスルーパスを中山が蹴り込み、勝ち越しに成功する。その後、イラクの猛攻を浴び続け、相手のシュートをGK松永成立が辛うじてコーナーキックに逃れたとき、時計の針は後半45分を指していた。キックオフ時に明るかった空は、いつの間にか漆黒の闇に包まれていた。

「しっかり準備する前にショートコーナーをされたものだから、え、まさか、という感じになって、みんながボールウォッチャーになってしまった。自分のちょうど前の選手にヘディングされて、ボールがゴールに吸い込まれていって......」