ザックJ不動のDF今野泰幸「代表が楽しくなくなった」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 今野は厳しい表情でそう語ったが、前線からの守備やラインコントロールなど、ディフェンスにおける戦術的な部分は、チームとしてメスが入れられ、問題解消に向けて少しずつは前進しているようだ。

 一方、選手個々の「守備の意識」という課題はどうだったのか。今野とともにセンターバックを務めている吉田麻也は、失点が増えた要因のひとつに、「いろいろなことが"なあなあ"になっていた」と語っていた。つまり、チーム全体の、守備に対する意思疎通、コミュニケーションが足りなかった、ということだ。

「確かに"なあなあ"の部分は(チーム内に)あったと思います。アジアでの戦いでは、相手が肝心なところでパスミスとかトラップミスをしてくれたので、大事には至らずに済んだ。本当は、そういう部分を"なあなあ"にしないで、突き詰めて(問題を)解消しておけば良かったんだけど、(結果的には)やられていないので(問題にもしないで)OKにしてしまった。そういうところを、コンフェデのときのブラジルや、(8月の)ウルグアイに突かれて失点が増えていった。

 その反省から(9月の)合宿中は、しっかり声を出すとか、当たり前で基本的なことをおろそかにしないで、90分間やっていこうとみんなで話し合っていたんです。それは、まあまあできたと思うけど、フリーになった敵に対して、誰がマークにいくのかとか、言葉が足りない部分もあった。メンタル面を含めて、以前のようにはまだできないですね」

「以前のようにはできない」――。今野の放ったその言葉が気になった。それは、いったいどういうことなのか。そして、いつ頃からなのか。

「(2011年1月の)アジアカップとか、(2012年10月の)欧州遠征でフランスやブラジルと戦っていた頃は、自分なりに(成長の)手応えが感じられたし、代表でプレイすることがすごく楽しかったんです。海外組の選手たちと絡んでいいプレイができていたし、自分たちのサッカーができたときは、強豪相手にもいい試合ができるんだって思えた。

 それが今年、コンフェデを3連敗で終えて、仕切り直しと位置づけたウルグアイ戦で(DF)ラインのギャップを突かれてズタズタにされ、何もできずに4失点した。あれは、本当にショックだった。それ以来、なんかプレッシャーしか感じなくなってきたし、(自分のプレイに対する)自信がグラついて、以前のように代表(でプレイすること)を楽しめなくなってきたんです。本当は、あの(9月の)2試合で開き直ってプレイし、モヤモヤした気持ちを吹っ切りたかったんだけど、そこまでには至らなかった。まだ(自分は)崖っぷちに立っている感じですね」

 DFは、どんな相手でも失点をゼロに抑えるなど結果を出せば、多少なりとも自信を回復できるはずだ。しかし、明らかに格下のグアテマラや、主力不在のガーナ相手では、満足できなかったということなのだろう。

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