岡山湯郷が善戦。なでしこ杯決勝で見えたリーグ全体のレベルアップ (3ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 このなでしこ杯決勝は、見応えのある一戦だった。互いに今季対戦は4度目ということもあり、手の内は知り尽くしている。その上での戦略であり、駆け引きがあった。適当なパスなど通用しない。攻守がめまぐるしく入れ替わる。主人公は一人ではなく、その一瞬一瞬でヒロインが生まれるような場面が多かった。

 INACは間違いなく強豪であるが、女王の座を守り続けていくための努力は計り知れない。常に高い意識を持ち続け、毎試合チャレンジャーをはねのける強さが必要だ。これまではINAC VS「その他のチーム」という対図だった。良くも悪くもINACは封じるべき相手として一目置かれていたのである。が、「その他」がチームとして対抗できることは少なかった。対抗できたとしてもそれはキーマンであることが多く、結局その対抗は“個”止まりだった。逆に言えば、個が際立つということは、それ以外は沈んでしまっているということだ。それが今シーズンに入ってからは、リーグ戦において各チームそれぞれ“個”ではなく、“チーム”が際立ってきているように感じる。マンパワーに頼るだけでなく、組織として戦術が浸透してきている証拠だ。その成長過程でぶつかりあったのがこのカップ戦だ。

 挑戦と修正を繰り返すことで成長するリーグ戦も魅力だが、短期集中の一発勝負という場も、選手たちにとっては必要な要素。タイトルをかけた熱いシーソーゲームに、降り注ぐ雨も気にせず、3700名を超す観客は盛り上がりを見せていた。来週からはリーグ戦も再開する。「この苦しい中で勝ちえたことで、今後のリーグ戦で苦しくなっても集中することができると思う」とは近賀。負ければ後のないトーナメントで見せる選手たちのプレイもまた格別なものがある。この時期に迎えるカップ戦決勝の意義を改めて感じる一戦になった。

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