ザックJは新たな代表候補の発掘をやめるべきではない (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Fujita Masato

 その点、ザッケローニは石橋を叩いて渡る慎重さを持っているものの、正真正銘の勝負師である。もし大会直前まで経験豊かなベテラン選手がゴールを量産し、パスの冴えを見せ、強靱な守備を見せた場合、イタリア人指揮官は関心を示すだろう。具体的に言えば、佐藤寿人、大久保嘉人、中村俊輔らは、今回の東アジア杯がブラジルW杯だったなら、選ばれていたのではないか。

 サッカー選手は星を持っているものだ。バイオリズムとも言えるが、何をやってもうまくいくような輝きを見せることがある。大会を前に質の高いプレイを見せている選手は選出するべきだろう。そうした選手はラッキーボーイになりうる。

 そして輝いている選手をユニットとして使うというのも一手だろう。イタリア代表はセリエA王者のユベントス、スペイン代表はリーガ王者のバルサを中心としたスタメンオプションを持つ。代表チームはクラブチームのように毎日練習するわけではないだけに、その連係力は捨てがたい。

 チーム単位でなくとも、近いポジションの選手を同一チームからユニットとして起用するのも一つの策だ。 例えば水沼宏太(23歳、サガン鳥栖)はその点で可能性を感じさせる。水沼の右足のクロスボールは高い精度を誇る。現代表にはいないクロッサータイプとして面白い。2012年シーズンは非公式記録ながらアシスト記録のトップを争った。中でも空中戦に強いFW豊田に配球するクロスは非凡、ホットラインで記録したゴール数は2012年のJリーグ最多となり、「豊田を最も輝かせるのは水沼」とも言える。

 あるいは、ザッケローニの目が行き届いていない選手もいる。

 小林祐三(27歳、横浜F・マリノス)は東アジア杯メンバーに入らなかったのが不思議な実力派右SBだ。優勝争いを演じるマリノスで右サイドの持ち場を守るだけでなく、CBの裏へのカバーリング能力も示し、マンチェスター・ユナイテッド戦でもフランス代表左SBエブラを巧妙に押し込んでいた。CBをやっていただけにヘディングは強く、走力と勘の良さ、攻め上がりのタイミングは随一。内田篤人に次ぐ右SBとして小林以上の人材はいない。

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