東アジア3連覇を逃したなでしこが、今、戻るべき原点 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 後半に入り、ボランチに阪口夢穂を入れて中盤を安定させると、後半12分、岩渕に代えてボールを配給することもできる大野忍を送り出す。ここでようやく、攻撃が流れ始めるが、ゴールを手にしたのはまたしても韓国だった。後半22分、右サイドからクォン・ハンヌルに展開され、最後は完全にDFを振り切りフリーとなっていたチ・ソヨンがチームメイトでもあるGK海堀あゆみの動きを冷静に見極めながらゴール。完璧な崩され方だった。その7分後、ようやく日本が反撃する。宮間あやのシュートがバーを直撃、こぼれ球をつないで大儀見優季がシュートするもDFがブロック、しかしそのこぼれ球を再び大儀見が押し込み、日本が1点を返す。持ち前の攻撃力が息を吹き返し、韓国ゴールを次々と脅かす日本。しかし、優勝へ必要な残り2ゴールは遠かった。

「ミスを恐れてプレイが消極的になってはいけないと思う」。大会期間中、選手たちからよく聞いたセリフ。大賛成だ。この時期にしかできないチャレンジがある。だが、最後まで足を引っ張った前半の45分間。彼女たちのミスにチャレンジの要素を見つけることは難しかった。多かったのは単純な技術ミス。パス1つを比べてみても、韓国は相手の足元にスピードあるパスが納まる。日本はというと、プレスがかかるとすぐにボールが浮いてしまう軽いパスが多く、カットされる確率も高かった。シュートでも同じことが言える。ミートしたシュートは何本あったか。戦術でもそう。韓国はDF陣からFW陣までボールを奪ったあとのビジョンが統一されていた。日本は緻密な組み立てでパターンを増やし、隙をついてゴールを奪うサッカーに加え、タテへの速い攻撃を取り入れる試みをしている。それが極端に偏り、かえって単純化してしまった。

 しかし、いつから『"なでしこ"はアジアレベルでは勝って当然』となったのか。いや、正しくもある。それだけの力をつけたことは事実だ。だがそれは、当然のことながら「持てる力をすべて注いだ場合」という条件がつく。日本はアジアカップでまだ一度も頂点に立っていない。ドイツワールドカップ優勝直後のロンドンオリンピック予選では、ワールドカップの余韻の中で1位通過を果たしたものの、それは過去のこと。新たなチーム作りを始めている今、もしそんな気持ちが選手たちの中にあったとしたならば、それは奢りとしかいいようがない。

 韓国の選手たちは国際経験にも乏しくこれからのチームだ。だからこそ、全力で日本に立ち向かってきたのではないのか。わずか2年前までの日本がそうだったように。かつての日本のようにプレスをかけ、一瞬のチャンスにかける。少なくとも韓国は自分たちのできるサッカーを正面からぶつけてきた。

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