工藤壮人が語る、代表に呼ばれて出場できない「悔しさと新たな欲求」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 胸の奥で蠢動(しゅんどう)する強い欲求。それこそが工藤を一流の選手にするための後ろ盾になる。

 工藤は篤実な性格で争いは好まないが、ピッチでは人一倍強い覇気を放つ。"誰にも負けない"という自負はエネルギーとしてスタンドまで伝わるほどだ。

「最近は、もっと毎日の時間をうまく使えるんじゃないか、と真剣に考えるようになりましたね」

 彼は自分自身と対話する。もっと強い敵と戦い勝つためには、もっと楽しいサッカーをするには何が必要か、もっと自分を表現できる舞台とは......生まれもっての闘争者なのだろう。心が疼(うず)くような欲求によって、自らのプレイをさらに高めていくタイプだ。レイソルでは年長者ではないにもかかわらず、チームメイトたちを叱咤することも多いという。

 世界王者のスペイン、リーガ・エスパニョーラにおいては、一流の選手になる性質的条件としてVANIDADという言葉がある。VANIDADはスペイン語で「自惚れ、虚栄心」を意味する。

 日本でうぬぼれは悪徳とされることも少なくないが、欲求を遂げるために欠かせない、自分を信じる力である。一流となるには、全力で挑んでくる相手を倒さなければならない。その戦場では一瞬の恐れが敗北につながる。強く自分を信じていなければ、少し劣勢に立っただけで崩れ落ちてしまうし、そもそも虚栄心があるからこそ、努力を惜しまないものだ。

 しかし強い欲求は、自らに苦しみも課すものでもある。

「すごく苛立っていました」

 工藤はコンフェデレーションズ杯が終わって再開したリーグ戦後に、その胸の内を吐露している。今までと同じ戦いでは満足できなくなった。彼の覇気は代表帯同をきっかけに、目に見えて増幅した。ぞくぞくするような戦いを、のどから手が出るほどに求めるようになった。

「"いつかは"という話ですけど、チャンピオンズリーグの舞台には立ってみたいと思いますね。別にどんなクラブでもいいんです。有名ではなくても。あの雰囲気は味わってみたいですね」

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