日本代表初招集、豊田陽平の覚悟。「ここで選ばれなかったら...」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

「ジャンプの調子が良いとき、ヘディングは相手を見下ろせますね」と豊田は言う。

「でも、体の使い方がうまいディフェンダーはなかなか自分の間合いにさせてくれないんです。ボールに近づかせない、みたいなことをしてくる。まあ、そこの駆け引きが勝負どころですね」

 大きな体躯を持っていても、高いレベルではそれだけでは勝てない。ルーキーの名古屋時代はその大きな体を持て余していたという。駆け引きの技術が上達したことで、豊田はヘディングで競り勝てるようになった。

 2010年から在籍する鳥栖で成長を遂げ、2011年シーズンはJ2得点王、2012年シーズンはJ1得点ランキング2位、そして2013年シーズンもJ1で得点王を争っている。着実に結果を叩きだしてきた日本人FWは、「最も代表入りが待望されていた選手」の一人だった。前田遼一がゴール前で不振に喘ぎ、ハーフナー・マイクが世界を相手にすると競り合うことすらできない現状で、センターフォワード候補は豊田しか残っていなかった。

「豊田は厳しいプレッシャーの中でも自分のプレイができる。プレイスタイルは日本代表のザッケローニ監督の好みに合う」と巷では囁(ささや)かれてきた。ザッケローニはウディネーゼ、ACミラン時代に愛したFWオリバー・ビアホフを理想の一人としている。長身でターゲットとして機能し、闘争心が強く、攻守に貢献できるという点で、豊田はそのドイツ人FWに一番近い性質を持っている。

「Jリーグでは結構点を取ってきたので、これで選ばれないんなら、"これ以上何をすればいいか分からないな"とは思いますね」

 コンフェデレーションズ杯が終わった後、豊田はその心境を口にしていた。

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