遠藤保仁「日本は勝ち切る力がなかっただけ。確実に成長している」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「あの失点」というのは、イタリアがCKから決めた前半41分のゴールだ。セットプレイからの失点というのは、日本が何度も痛い目に合ってきたものだった。遠藤はもちろんそれも課題としたが、より問題視したのは、CKを与える前のプレイだった。

「CKの前、(切れ込んできた)ピルロにもっと体を寄せてシュートを打たせないようにするとか、そういう細かいプレイをきっちりやっていかないといけない。そうしないと、ワンプレイで相手に流れを持っていかれてしまうことになる。大きな舞台で、レベルの高い相手と戦うと、ああいうワンプレイで流れが変わってしまうという怖さを知ったし、細かいことを突き詰めてやっていかないと、勝ち試合を負け試合にしてしまうんだな、と改めて痛感した」

 続くメキシコ戦は、イタリア戦で回復した自信を確固たるものにするためにも、勝ちにいった試合だった。しかし、1-2で敗れた。

「メキシコ戦は体力的な問題もあって、イタリア戦ほど前からいけなかった。最初は高い位置でプレスに行けていたけど、相手もハイプレッシャーという感じじゃなかったし、こっちもじっくり構えて、という感じになった。失点は、サイドからのクロスとセットプレイから。やっぱり同じようなやられ方を繰り返していては、勝つのは難しくなる。自分たちで自分たちを苦しくさせてしまった部分もあったけど、結局は細かいところを突き詰めることができていなかった。ゲーム内容が悪くなかったとしても、それでは勝ち切れない」

 昨年10月、欧州遠征のフランス戦は、内容は悪かったものの、カウンターから決勝点を奪って1-0で勝った。2戦目のブラジル戦では、あの時点で「自分たちの何が通用して、何が通用しないのか」というテスト的な意味合いを持って挑み、積極的に前に出て戦う姿勢を貫き、多くのチャンスを作って手応えを得られた。それゆえ、0-4という惨敗だったが、試合後はポジティブな空気に満ちていた。

 あれから8カ月、今回のコンフェデレーションズカップでは、勝利にこだわって臨んだ。だが、いいサッカーができた試合でも勝てなかった。欧州遠征とは狙いが異なるとはいえ、「世界との差は広がったのではないか?」――そう疑ってしまうような結果に終わった。

「う~ん......、あのとき(欧州遠征)よりも(世界との)差が広がったかどうかというのは、一概には言えない。確かにブラジル戦は何もできずに終わったし、前回(0-4で敗戦)よりもスコア(0-3)以上の差を感じたけど、それは自分たちの問題というか、前から行く姿勢が欠けていた部分があるからね。それに、イタリア戦とメキシコ戦は、短期間で気持ちを切り替えて、自分たちのサッカーができた。それは、確実に成長しているという証拠だと思う。少なくとも自分たちのやろうとしていることは、間違っていないし、悪い方向に進んでいるとは思っていない」

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