【なでしこ】最悪な条件の戦いから見えた、なでしこたちの新たな課題 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 まずは、前半で思うように追加点が奪えず、最小点差での折り返し。数的不利な状況を考えれば、ヨーロッパ遠征に帯同させる選手の絞り込みのために後半からの投入を考えていた選手たちの起用が難しくなった。これが佐々木監督の言う"誤算"の最たるもの。結局は、ここまでの合宿での判断にならざるを得なくなった。だが、起用されなかった選手にとっては、勝負のかかった場面で自分の場所がないということ。それが自らの現在地だ。今後、肝に銘じておかねばならないだろう。

 また、後半にかけて湧き出てきたであろう攻撃のオプションへの挑戦が絶たれた。だが、これに関してはヨーロッパで行なわれるイングランドとドイツとの対戦でトライができる。日本が研究されている環境は、今やどこと対戦しても変わることはない。ならば今後、宮間が封じられることも十分考えられることだ。その場合、誰がスイッチャーになるのか。「はい、私がやります」と言ってできることでないのは当然のことだが、意識してトライしなければ変化は起きない。ましてや今回は一枚足りない状況で荒天。考えうる最悪の条件が出そろった。宮間の不在は残念ではあるが、だからこそ得られた貴重な悪条件でもある。この難関を乗り切ることができれば、新たな形を得られるビッグチャンスでもあったのだ。

 ところが、感じたのは"宮間の不在感"以外の何物でもなかった。

 ワントップとなった大儀見と、阪口&田中明日菜のボランチとのポジショニングなど工夫が見られるところもあった。3月のアルガルベカップでの大儀見は"味方を生かす"動きを見せて若手の動きを促していたが、その大儀見もベストメンバーの中に入れば"生かされる"存在。そこから生まれるゴールが日本の得点源になっていることは明らかで、そのためにもスイッチャーの存在は必須なのである。

 もちろん、ニュージーランドのパフォーマンスの高さも、苦戦の要因の一つだ。もともとフィジカルに長(た)けたニュージーランドは「ボンボン蹴ってくるイメージ」(阪口夢穂)で、パワープレイも多かった。

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