【なでしこ】最悪な条件の戦いから見えた、なでしこたちの新たな課題

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

宮間あやの存在感を改めて感じる試合内容となったニュージーランド戦宮間あやの存在感を改めて感じる試合内容となったニュージーランド戦「想定外のことだった」と指揮官は振り返った。20日に行なわれたキリンチャレンジカップのニュージーランド戦。前半終了間際に、宮間あやが2枚目のイエローカードでまさかの退場。台風4号の影響から、スリッピーになっていたピッチでのスライディングに対する判定は、首をかしげるものであったが、レフェリーのジャッジも含めてのサッカー。それでも、アクシデントとしか言いようがないこのレッドカードは、オリンピック以降、初めてベストメンバーが揃うこの一戦に大きな影響を及ぼした。

 ロンドンオリンピックから約1年。佐々木則夫監督が結果を重視するために組んだ"ベスト"はケガで招集を見送られた近賀ゆかり、鮫島彩が務めた両サイドバック以外は、ドイツワールドカップ、ロンドンオリンピックを戦った顔ぶれだった。このメンバーでプレイするのはオリンピック以来のこと。緻密な計算を擁するなでしこサッカーにとってこのブランクは大きい。徐々に試合の中で感覚を取り戻していく予定だったのだろう。

 なでしこたちはスロースタートだった。それでも21分、右サイドバックのスタメンを勝ち取った有吉佐織のオーバーラップから前線へ放たれたアーリークロスに大儀見優季がスライディングボレーで先制。日本らしいサイドアタックからの得点だったが、この形で決定機を作ったのは左右サイド合わせて、この一本に留まったのは寂しい限りだ。

 それぞれが互いの感覚を確かめるようにプレイしていた中でも、一本のタテパスで好機を生みだす宮間の存在感はひと際大きかった。ボールを動かしてはいるものの、攻撃のスイッチを入れる人材が乏しかった3月のアルガルベカップとの比較は酷だとわかっていても、宮間のスイッチパスはそれ一本で多くの人間を活性化させる効果がある。それはこの日も健在だった。先制ゴールが生まれる直前にも、DF裏を狙ったクロスで大儀見&安藤梢の2トップを刺激する。すると、逆サイドの川澄奈穂美のポジショニングもよくなるのだから不思議なものだ。その宮間が退場となったことで、状況は一変した。

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