イタリア戦で見えた、日本が「強いチーム」になるためのカギ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo


 まずは、ブラジル戦での完敗を引きずらず、精神的によく立ち直ったと思う。ザッケローニ監督は「ブラジル戦で見せられなかった決意を、この試合では見せた」と話していたが、まさにその通りだ。

 何もさせてもらえなかったブラジル戦から一転、イタリアのよさを出させないために、「ボールを速く動かし、できるだけボールをキープしようとした」とザッケローニ監督。その狙いに応えるように、DF今野泰幸は「今日は意味のないパス回しじゃなくて、(相手にとって)怖いパス回しができた」と振り返る。

 世界トップレベルのチームを相手にしても、これだけの内容の試合ができたことはひとつの成果であり、収穫である。日本が目指すサッカーの方向性としては、これまでやってきたことが決して間違いではなかったことの証明だろう。

 だが、その一方で今回のイタリア戦は、日本らしさを出すためには、それなりの条件が必要であることをあらためて思い知らされた試合でもある。

 日本より試合間隔が短い中2日(日本は中3日)で臨んだイタリアは、初戦のメキシコ戦に勝利していたこともあり、無理せず慎重な試合の進め方を選んだ。簡単に言えば、一度リトリート(後退)して守備ブロックを整えたのである。これが日本にとっては好都合だった。

 しかも、イタリアの4-3-2-1という布陣は、先細りの人数配置からも分かるように前線からプレッシャーをかけにくい。必然、日本はセンターバックの今野とボランチの遠藤保仁を中心に、低い位置から落ち着いて攻撃を組み立てることができた。つまりは、これこそが日本らしさが発揮された要因なのである。

 それに対し、高い位置からプレッシャーをかけてきたブラジルは、楽に攻撃を組み立てさせてはくれなかった。残念ながら、ハイプレスをかいくぐれるほどの技術と余裕を持たない日本は、こうした対応を極端に苦手としている。

 要するに、完敗したブラジル戦と善戦したイタリア戦との違いは、ブラジルとイタリアとの力の差というより、少なからず日本に対する戦い方の違いから生じたものと考えられる。

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